藤川IP特許事務所メールマガジン 2023年1月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2023年1月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃ (12)特許庁への情報提供<特許異議申立>

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■「ビジネス関連発明」の最近の動向を公表(特許庁)
┃ ■世界の特許出願件数が過去最高に(WIPO)
┃ ■著作権侵害の賠償額を上乗せへ(文化庁)
┃ ■営業秘密持ち出した元社員に有罪判決(東京地裁)
┃ ■PCT国際出願関係手数料改定について
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新年明けましておめでとうございます。
昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。
本年も所員一同、誠意をもって知的財産サービスの提供をして参りますので、本年も変わらぬお引き立ての程、よろしくお願い致します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(12)特許庁への情報提供<特許異議申立>
【質 問】
ライバルメーカーの会社名を特許出願人の検索キーワードにして特許庁のJ-Plat Patで検索したところ、特許権が成立し、特許公報が先月発行されたものを見つけました。

この特許の内容は当業界で従来から行われていた技術で、特許権が付与されたのが間違いではないかと思います。何か対応したいのですが、どのようなことが可能でしょうか?

【回 答】
発見した特許に対して、将来、特許無効審判が請求された際に特許庁での審理で利用してもらうべく特許庁へ情報提供を行う、特許の取り消しを求めて特許掲載公報発行後6カ月以内に特許異議申立を特許庁へ提出する、あるいは、特許を無効にすべきであるとして特許無効審判請求を特許庁へ提出する等の対応が可能です。

<特許付与後の情報提供>
特許権が成立した後であっても特許庁に対して情報提供することができます。
特許権成立後の情報提供は、特許権成立後のいつでも行えます。
特許権が成立する前に、特許庁での審査に利用してもらう目的で行う情報提供と同様に、誰でも提出可能です。

また、特許庁へ提出する書類の「住所又は居所」、「氏名又は名称」の欄に「省略」と記載することで匿名で提出できます。

提出する情報は、特許権が成立する前に行う情報提供と同様に、特許権が成立した発明が新規性、進歩性、等の特許要件を満たしていないものであること等を主張する根拠になる書籍、等の刊行物の写し、特許出願公開公報、実験報告書などの証明書、インターネットに掲載されていた技術情報などになります。

特許庁の審査に利用されていなかった可能性がある業界紙・誌、発行日を特定できる商品カタログなども技術情報として提出できます。

特許権成立後に情報提供が行われたことは特許庁のJ-Plat Patの経過情報-登録情報にアップされます。特許権者が権利行使を考慮するときには自己の特許権の状況を確認しますし、特許無効審判を請求しようとする第三者も特許権の状況を確認します。

特許庁へ情報提供された技術文献の内容は書類閲覧を行うことで特許権者や、特許無効審判請求を検討している第三者の目に留まることになります。

情報提供された技術情報によって特許無効になる可能性が高いときには、特許権者は特許権の行使に慎重になると思われます。特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められる場合、特許権者は権利行使できないとされているからです(特許法第104条の3 特許権者等の権利行使の制限)。

また、第三者は、情報提供された技術情報を利用して特許無効審判請求に臨む可能性が出てきます。
特許権成立後の情報提供にはこのような意義があります。

<特許異議申立>
上述した特許権成立後の情報提供から一歩踏み込んで、特許の取り消しを求めて、特許庁に再審査を求める特許異議申立を行うこともできます。
特許異議申立も特許付与後の情報提供と同じく誰でも行うことができます。

ただし、情報提供制度のように匿名で行うことはできません。

後述するように、特許異議申立が特許庁へ提出された後の審理は特許庁と特許権者との間で進められ、原則として書面審理になります。

そこで、例えば、いわゆる、ダミーを立てて、真の申立人がわからないようにして特許異議申立を行うことも可能です。 

<特許公報発行後6カ月に限り提出可能>
特許権が成立すると、特許庁は成立した特許権の内容を社会に公示するため特許掲載公報を発行します。
特許出願公開公報と同様に紙で特許掲載公報が発行され、また、同時に、特許庁のJ-Plat Patでも公表されます。

特許権成立から2~3週間で特許掲載公報が発行され、その後6カ月以内に限って特許異議申立を特許庁に提出できます。

<特許取消決定になれば特許権は消滅>
異議申立が提出されると特許庁では3人又は5人の審判官による合議体を構成して審理します。
特許が成立するまでの審査では、拒絶査定不服審判を経ていない場合、審査官1人で審査しています。

特許異議申立では審判官の合議体によって慎重で、的確な審理が行われることが期待されています。

審理の結果、特許を取り消すべきとなった場合には特許取消決定が下されます。
一方、特許を取り消すことはできないとなった場合には特許維持決定が下されます。

特許取消決定に不服がある特許権者は、知的財産高等裁判所に決定の取消を求める訴えを提起できます。
一方、特許維持決定に対して異議申立人は不服を申し立てることができません。

特許異議申立人は、同一の証拠、同一の理由で、あらためて、特許無効審判を請求し、特許庁の審理を受けることができるからです。

特許取消決定に対して不服を申し立てる道が無くなり、特許取消決定が確定したときには、特許無効審判請求で無効審決が確定した時と同じく、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます。

なお、特許異議申立を審理した審判官合議体が「特許を取り消すべき」との判断になった場合には「特許取消理由」が特許権者に通知されます。

特許権者は、新規性欠如・進歩性欠如、等が指摘される取消理由を解消する目的で、特許請求している発明の効力範囲を狭める「訂正請求」を行ったり取消理由に反論することができます。

<異議申立を受けた特許権の10%程度が特許取消>
特許庁が公表しているデータによれば、特許異議申立を受けた特許権の中の40%程度はそのまま維持され、45%程度は効力範囲を狭める訂正請求が行われて維持され、10%程度が取消決定となって消滅しているようです。

10%程度しか取消決定確定になりませんが、異議申立を受けた特許権の中の45%程度は特許権の効力が及ぶ範囲が狭くなる訂正が行われています。

これらのケースの多くでは特許異議申立の目的が達成されているといえるのかもしれません。

特許権成立後の情報提供も、特許異議申立も、国(特許庁)が独占排他権として成立を認めた特許に対するもので、慎重に進めることが望ましいです。

詳しくは専門家である弁理士にお問い合わせください。

<次号のご案内>
次号では、特許異議申立とは異なって特許権成立後のいつでも提出可能で、特許異議申立と同じく、特許権が初めから存在しなかったものとみなされる効力を発揮できる特許無効審判についてのご質問に回答します。

■ニューストピックス■
「ビジネス関連発明」の最近の動向を公表(特許庁)
特許庁は、「ビジネス関連発明の最近の動向について」の調査結果を公表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

「ビジネス関連発明」の用語については、公式な定義があるわけではありませんが、ビジネス方法がICT(Information and
Communication Technology:情報通信技術)を利用して実現された発明のことを指す場合が多いようです。

特許は技術を保護する制度であるため、販売管理や生産管理など、ビジネスの方法や仕組みに関する画期的なアイデアを思いついたとしても、アイデアそのものは特許の保護対象になりません。

ただ、このようなアイデアがICTを利用して実現された場合には、「ビジネス関連発明」として特許の保護対象となり得ます。

特許審査においてはコンピュータソフトウェア関連発明に含まれるものとして取り扱われています。

調査結果によると、国内のビジネス関連発明の特許出願件数は2012年頃から増加に転じており、2020年は11,747件の出願がありました。

出願件数が増加している背景としては、スマートフォンやSNSの普及、AIやIoT技術の進展により、ICTを活用した新たなサービスが創出される分野が拡大していることなどが考えられます。
特に「金融」(フィンテックを含む)分野では、出願件数が増加しています。
スマホ決済や家計簿アプリといったユーザがスマホを介して気軽に受けられる金融サービスが増えているためです。

世界の特許出願件数が過去最高に(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「世界知的財産指標(WIPI)」によると、2021年の世界の特許出願件数は約340万件となり、前年比3.6%の増加となりました。
2年連続の増加で、2018以来3年ぶりに過去最高を更新しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

国別では中国が158万件で1位となり、世界全体の5割近くを中国の出願が占めています。
2位は米国(59万1473件)、3位は日本(28万9200件)、4位は韓国(23万7998件)、5位は欧州特許庁(18万8778件)。
地域別シェアではアジアが67.6%と圧倒的多数を占めています。

中国は前年比5.5%増、韓国は2.5%増。

なお、特許庁が昨年7月に発行した「特許行政年次報告書2022年版」によれば、2021年に日本国特許庁が受け付けた特許出願の数は289,200件で、前年を728件上回り、数年来続いていた減少傾向が止まっています。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

著作権侵害の賠償額を上乗せへ(文化庁)
文部科学省の文化審議会著作権分科会は、著作権侵害に対して損害賠償を請求する際の算定方法を見直し、賠償額を増額すべきとする報告書素案を取りまとめました。
これを受け、文科省では、近く著作権法を改正する方針です。

漫画を無断で掲載する「海賊版サイト」などの被害を巡っては、賠償額が低く、著作権侵害による利益の大部分を侵害者側が得たままになる、との指摘がありました。

現行法では、損害賠償請求訴訟で売り上げの数量から損害額を算出する場合、著作権者の販売能力を超える部分については損害額から控除されています。

このため、文科省は、この控除部分のうち、本来なら著作権者に支払われるべきライセンス料に相当する金額を損害額に上乗せできるよう、算定方法を見直す方針です。

さらに、ライセンス料相当額の算出に当たっては、海賊版被害であることも考慮し、正規に利用した場合の金額より多く賠償請求することも可能とする方向で検討しています。

営業秘密持ち出した元社員に有罪判決(東京地裁)
勤務先だったソフトバンクから高速・大容量の通信規格「5G」に関する営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反の罪に問われた楽天モバイル元社員に対し、東京地裁は執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。

判決によると、元社員は、自宅のパソコンから会社のサーバーにアクセスし、営業秘密に当たる5Gなどの技術情報に関するファイルを自分のアドレスにメール送信して不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われました。

元社員側は「持ち出した情報は営業秘密には当たらない」と無罪を主張していました。

不正競争防止法における営業秘密とは「秘密として管理されている技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」を指します。

営業秘密として保護されるには「秘密管理性」「非公知性」「有用性」の3つの要素を満たす必要がありますが、弁護側は「アクセス制限が十分になされていなかった」「公開された情報である」「他社には利用価値がない情報」など、3要素のいずれにも該当しないと主張していました。

これに対し、東京地裁は「ファイルにはソフトバンクが長年にわたって構築したネットワークに関するものや、5Gへの切り替えを計画していた基地局の情報など、将来的な構想をうかがい知れる重要な情報が含まれていた」などと、いずれの要素も充足すると指摘し、持ち出された情報は、営業秘密に当たると判断しました。

PCT国際出願関係手数料改定について(特許庁)
2023年1月1日より、国際出願関係手数料が改定されます。

2023年1月以降に本手数料の納付をする場合は、手数料の額及び適用関係には注意が必要です。
詳細は特許庁HPをご参照ください。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<編集後記>
新年明けましておめでとうございます。

本年も知的財産に関して皆様のお役に立つ情報をお届けできるよう努めて参ります。
どうぞ宜しくお願い致します。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内***************************************************************

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