藤川IP特許事務所メールマガジン 2025年11月号

************************************************************
◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
************************************************************

このメルマガは当事務所とお取引きいただいている皆様、または当事務所とご面識のある皆様にお届けしています。
知的財産に関する基礎知識や最新の法改正情報など、実務上お役に立つと思われる情報をピックアップして、送らせて頂きます。

メルマガ配信をご希望でない場合は、誠に恐縮ですが、本メールの末尾で配信停止を行って下さい。

━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2025年11月号
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(46)拒絶理由を受けた「物」発明から「方法」発明への補正

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書(特許庁)
┃ ■「3倍巻きトイレ紙」の数値限定特許、二審も特許侵害認めず
┃ ■大阪・関西万博「ミャクミャク」の売上800億円(万博協会)
┃ ■ノーベル生理学・医学賞と化学賞、日本人がダブル受賞
┃ ■「日本成長戦略会議」を新設、先端技術に積極投資(政府)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

特許庁は、「令和7年度特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」を取りまとめました。

同調査は、特許審査に対するユーザー(出願人や権利を行使される第三者等)のニーズの把握などを目的に、特許審査・国際調査など全般の質について調査したものです。

報告書によると、「特許審査全般の質」は、肯定的な評価の割合(5段階評価の3以上)が95.7%に上りました。

┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳┓
┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻┛━━━━━━━━━━━━━━━━

(46)拒絶理由を受けた「物」発明から「方法」発明への補正

【質問】
 「装置」についての発明で特許出願し、審査を受けたのですが、進歩性欠如という拒絶理由を受けました。拒絶理由に引用された先行技術文献の内容を読むと特許庁審査官の指摘は妥当なように思われます。しかし、この「装置」をどのように使用するか、その「使用方法」に関しては、先行技術文献に記載も示唆もされていません。「装置を使用する方法」ということにして特許取得を目指すことはできないでしょうか?

【回答】
 特許出願時の明細書、図面の中に記載していた「装置を使用する方法」であるならば、特許請求する発明を「物」の発明である「装置」から、「装置を使用する方法」に補正して審査を受けることが可能です。この事情について説明します。

発明の種類(カテゴリー)
 自社が開発した新規な技術について、他社の実施行為をより広い範囲で排除できるようにするためには、いろいろな角度から特許取得を目指す発明を検討して把握することが大切です。

 特許法では、発明を「物の発明」と「方法の発明」とに大別し、更に、「方法の発明」の中に「物を生産する方法の発明」という種別を設けて、発明の種類(カテゴリー)ごとに、どのような行為が発明の実施に該当するのか定めています(特許法第2条第3項)。 

発明の種類(カテゴリー)に応じた実施行為の定義
 例えば、〇〇装置、○○機械、〇〇材、○○剤、コンピュータプログラムのような「物」の発明の場合、その「物」を生産する行為、その「物」を使用する行為、その「物」を販売などによって譲渡する行為、その「物」を貸渡しする行為、その「物」を輸出する行為、その「物」を輸入する行為、その「物」を譲渡又は貸渡しするために展示する行為やカタログによる勧誘・パンフレットの配布などのようにその「物」の譲渡又は貸渡しのために行う申し出、インターネットなどのネットワークを通じてコンピュータプログラムを提供する行為などが発明の実施に該当します。

 そこで、特許成立している「物」の発明について、権原なき第三者が、前述したような行為を行うと特許権侵害ということになります。

 「物を使用する方法」、「計測方法」などのいわゆる「単純方法」の発明の場合には、その「方法」を使用する行為が発明の実施に該当し、権原なき第三者が、特許成立している「方法」を使用すると特許権侵害ということになります。

 「物を生産する方法」の発明の場合には、「単純方法」発明の場合と同じく、その「方法」を使用する行為が発明の実施に該当します。また、その「方法により生産した物」を、使用する行為、販売などによって譲渡する行為、貸渡しする行為、輸出する行為、輸入する行為、譲渡又は貸渡しのための申し出を行う行為なども発明の実施に該当します。

 そこで、権原なき第三者が、特許成立している「生産方法」により物を生産したり、その行為によって生産した物を使用する、販売、等すると特許権侵害ということになります。

<「物」の発明で特許取得を目指すことが一般的
 「単純方法」で特許取得した場合、その「単純方法」が使用されている(実施されている)ことを容易に把握できるのであるならば、成立した特許権の効力に基づいて差し止め請求、等を行うことができます。一方、その「単純方法」が、工場の中で実施されるものであって、他社の工場内で実施されているかどうか把握することが難しい場合には、特許権取得できても権利行使することは難しいことになります。

 「物を生産する方法」で特許取得した場合、上述したように、「その生産方法で生産した物」を使用する行為、販売する行為などに対しても特許権に基づく権利行使可能ですが、やはり、特許成立している「生産方法」発明が、同業他社の工場内において実施されていることを把握して立証する必要があり、特許権取得しても権利行使することは容易ではありません。

 特許取得を目指す〇〇装置の使用方法が新規なものである場合、「〇〇装置とその使用方法」というように「物発明」と「方法発明」とを1件の特許出願で同時に特許請求することがありますが、上述したように、特許権の効力範囲が最も広いのは「物」の発明ですので、特許取得を目指す発明を〇〇装置、○○機械、〇〇材、○○剤、コンピュータプログラムのように「物」の発明として表現できるときには、「物」の発明で特許取得を目指して審査を受けることが一般的です。

<「物」の発明から「方法」発明への補正
 今回のご質問のように、「物」の発明で特許出願し審査を受けたところ進歩性欠如を指摘する拒絶理由を受け、これを解消することが困難であると判断できる場合、拒絶理由通知書に回答する際に、特許請求する発明を「〇〇装置を使用する方法」のように「方法」発明に補正して特許取得を目指すことが可能です。

 また、拒絶理由通知書で進歩性欠如の拒絶理由に引用された先行技術文献の記載と対比・検討した時に「方法」発明に補正すれば特許取得の可能性が十分あると考えられるが、「物」発明に対する進歩性欠如を指摘する拒絶理由に対して反論できる余地があるのではないかとも考えられる場合に、進歩性欠如を指摘する拒絶理由に反論して審査官に再考を求める対応を行って「物」発明についての特許取得を目指しつつ、審査を受けている特許出願から分割出願(特許法第44条)を行い、分割出願で特許請求する発明を「方法」発明に補正して審査を受け、「方法」発明についての確実な特許取得を目指す、という道もあります。

 ただし、いずれにしても、補正後の「方法」発明が特許出願時の明細書、図面に記載されていたものでないと、「新規事項追加の補正である」として補正後の発明が拒絶される理由になります。

 また、審査を受けていた「物」発明から、明細書に記載していた「方法」発明に変更する補正が、拒絶理由が通知された後に発明の内容を大きく変更することを禁止しているシフト補正禁止規定(特許法第17条の2第4項)に違反することになる場合も、補正後の発明が拒絶される理由になります。

 そこで、審査を受けていた「物」発明から明細書に記載していた「方法」発明に変更することを希望される場合には、専門家である弁理士に十分に相談することをお勧めします。

■ニューストピックス■

●「特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」(特許庁)
特許庁は、「令和7年度特許審査の質についてのユーザー評価調査報告書」を取りまとめました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

同調査は、特許審査に対するユーザー(出願人や権利を行使される第三者等)のニーズの把握などを目的に、特許審査・国際調査など全般の質について「満足」、「比較的満足」、「普通」、「比較的不満」、「不満」の5段階で評価した結果を取りまとめたものです。

報告書によると、国内出願における特許審査全般の質についての評価(全体評価)は、上位評価割合(「満足」「比較的満足」の評価割合)が60.7%、「普通」以上の評価の割合が95.7%でした。

PCT出願における国際調査等全般の質についての評価(全体評価)は、上位評価割合が59.1%、「普通」以上の評価の割合が96.8%でした。

特許庁は、分析の結果、国内出願において、「判断の均質性」、「第29条第2項(進歩性)の判断の均質性」の項目が全体評価への影響が大きく、かつ相対的な評価が低いため、これらを優先的に取り組むべき項目と設定しました。

<判断の均質性>
「上位評価割合」(「満足」「比較的満足」)は45.1%、「普通」以上の評価割合は88.1%。

<「第29条第2項(進歩性)の判断の均質性」>
「上位評価割合」(「満足」「比較的満足」)が41.8%、「普通」以上の評価割合が84.2%

●「3倍巻きトイレ紙」の数値限定特許、二審も特許侵害認めず(知財高裁)

従来品より3倍長いタイプのトイレットペーパーに関する特許を侵害されたとして、日本製紙クレシアが大王製紙に対して起こした訴訟の控訴審で、知的財産高等裁判所は、特許侵害を認めなかった1審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却する判決を言い渡しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

大王製紙は、知財高裁による控訴棄却に対して日本製紙クレシアが上告受理の申し立てを行わず、訴訟が終結したと発表しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

裁判では、商品を柔らかく仕上げるため表面に付けられた凹凸の深さが、特許で定められた数値の範囲に入るかなどが争われました。

日本製紙クレシアは、「スコッティ」ブランドで長さ3倍のトイレットペーパーを販売。2020年までに紙の表面の凹凸や包装に関する技術の特許を取得しました。

一方、大王製紙は「エリエール」ブランドで長さ3.2倍のトイレットペーパーを発売。日本製紙クレシアは、「エリエール」の凹凸の深さが特許で定めた範囲内にあるなどと主張し、2022年に製造・販売の禁止や賠償を求め、東京地裁に提訴しました。

1審の東京地裁は、「大王製紙の製品の凹凸の深さは、日本製紙クレシアの特許発明が定める数値の範囲内にあるとはいえない」として、特許権の侵害にあたらないと判断しました。

控訴審でクレシア側は、新たに凹凸の深さを測定した結果を証拠として提出しましたが、知財高裁は「証拠の内容を考慮しても特許の範囲内にあるとはいえない」として、1審に続いて特許侵害を認めず、訴えを退けました。

●大阪・関西万博「ミャクミャク」の売上800億円(万博協会)
日本国際博覧会協会(万博協会)は、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」などの公式ライセンス商品の売り上げが、8月末時点で約800億円に上ると公表しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

(商標登録第6656708号)

協会が公表した運営収支見込みによると、「ミャクミャク」などの公式ライセンス商品の販売状況については、これまでに約400社とライセンス契約を締結しており、8月末時点で約800億円の売り上げがありました。公式グッズは、販売価格の6~10%がライセンス料として万博協会に支払われる仕組みで、好調なグッズ販売にも支えられ、運営収支は当初計画を約230億円上回りました。

人気の高まりを受け、万博協会は、公式グッズの販売期間を来年3月末まで延長することを決めました。当初、閉幕日の10月13日までの予定でしたが、売り上げが好調なため、閉幕後も万博会場外の店舗やインターネットサイトで売れるようにしました。

●ノーベル生理学・医学賞と化学賞、日本人がダブル受賞

 2025年のノーベル生理学・医学賞を大阪大学特任教授の坂口志文氏が、化学賞を京都大学特別教授の北川進氏が、それぞれ受賞しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

坂口氏は「免疫応答を抑制する仕組みの発見」が、自己免疫疾患やがんなど免疫が関わる病気の予防や治療につながると評価されました。

北川氏は気体を自由に出し入れできる「金属有機構造体(MOF)の開発」が評価され、環境・エネルギー問題や新素材開発など広範な分野での応用が期待されています。

日本人研究者が生理学・医学賞を受賞するのは7年ぶりで坂口氏は6人目、化学賞は6年ぶりで北川氏は9人目。2021年以降、日本人の自然科学系の受賞はありませんでしたが、今回、同年ダブル受賞の快挙を成し遂げ、日本の研究力の底力を世界に示しました。

<ノーベル賞と基礎研究力>

日本人研究者の自然科学系3賞(物理学、化学、生理学・医学)の受賞者は、米国籍取得者を含めると計27人に上りますが、近年、授賞対象となったのは20~30年前の研究成果が多いのが現状です。今後もノーベル賞受賞につながる研究を生み出すためには、基礎研究力の強化が課題とされています。

日本の基礎研究力は国際比較で低下しています。文部科学省の科学技術・学術政策研究所が公表した「科学技術指標2025」によると、注目度の高い「トップ10%論文」数では、日本は世界で13位と低迷。1位の中国、2位の米国に大きく差が付いています。

日本全体の科学技術力・経済力を底上げするため、政府は「第7期科学技術・イノベーション基本計画」において、基礎研究力の強化に向けた検討を進め、今後10年以内に「トップ10%論文」数で、世界3位以内を目指すとしています。

●「日本成長戦略会議」を新設、先端技術に積極投資(政府)

 政府は、日本の成長戦略の具体策を議論する「日本成長戦略会議」を新設する方針です。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

 高市首相は所信表明演説で、人工知能(AI)や半導体、量子、バイオなどの先端技術分野に積極的な投資を図る「危機管理投資」で経済成長を実現すると訴え、日本成長戦略会議の設置を表明しました。城内実経済財政相が担当し、「先端技術を開花させることで日本経済の強い成長の実現を目指す」と説明しています。

***************************************************************
発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知

〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com
URL:https://fujikawa-ip.com/

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
***************************************************************

本メールマガジンの無断転載はご遠慮下さい。
本メールマガジンの記載内容については正確を期しておりますが、弊所は、利用される方がこれらの情報を用いて行う一切の行為について責任を負うものではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA