藤川IP特許事務所メールマガジン 2025年12月号

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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2025年12月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(47)拒絶査定不服審判請求(1)
┃    ~審判制度の概要、特許出願と審判請求~

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■世界の特許出願件数が過去最高を更新(WIPO)
┃ ■海賊版サイトでの「ただ読み」被害8.5兆円(対策団体調査)
┃ ■商標の早期審査・早期審理ガイドライン改訂(特許庁
┃ ■「木枯し紋次郎」の著作権侵害を認定(知財高裁)
┃ ■「知的財産スタートブック」を作成(特許庁)
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特許庁は、『経営課題に効く!中小企業のための支援施策ガイド「知的財産スタートブック」』を公表しました。

ガイドブックには、中小企業の経営者や知財担当者、自治体や支援機関の担当者が個社の課題や活動段階に応じた支援施策にたどり着くことができるよう、各施策の概要・対象者・支援の効果などがまとめられています。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(47)拒絶査定不服審判請求(1)

~審判制度の概要、特許出願と審判請求~

【質問】
 特許出願の審査で特許庁審査官から受けた拒絶理由通知に対して意見書・手続補正書を提出して再考を求めたのですが「拒絶理由は解消していない」ということで審査官の最終判断とされる「拒絶査定」を受けました。裁判におけるいわゆる三審制のように、特許出願の審査でも不服である場合には上級審の審理を受けることができると聞いています。これはどのようなものなのでしょうか?

【回答】
 特許庁審査官の最終処分である拒絶査定に対しては、拒絶査定不服審判請求を行って特許庁における上級審で審理を受けることができます。拒絶査定不服審判で「拒絶理由は解消していない」として特許庁の最終処分である拒絶審決を受けた場合には拒絶審決の取り消しを求めて東京高等裁判所の知的財産専門部である知的財産高等裁判所に出訴することができます。このような構造であることから特許の審査も三審制で行われていると説明されることがあります。今回から拒絶査定不服審判について説明します。

<拒絶査定不服審判>
 特許出願については特許出願手続とは別個に審査請求手続を行いませんと、特許権を与えることができるかどうか特許庁審査官が検討・判断する審査が開始されません。

 審査請求は特許出願日から3年以内であればいつでも行うことができますが、出願日から3年以内に審査請求が行われない場合、その特許出願はその時点で取り下げたものとみなされて消滅し、以降、復活させて審査を受けることはできません。

 審査請求が行われた特許出願について特許庁での審査が開始され、最初の審査結果が特許出願人に通知されるのは平均して審査請求後11カ月とされています。

 審査の結果、新規性欠如・進歩性欠如、等の理由で「特許を認めることができない」という拒絶理由通知を受けた場合、60日以内に意見書・手続補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。

 意見書・手続補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めても審査官が「拒絶理由は解消していない」と判断するときに審査官の最終判断としての拒絶査定が下されます。

 この拒絶査定に対して不服であるときに、特許庁の上級審での審理を求めて、拒絶査定後3カ月以内に特許庁へ提出できるのが拒絶査定不服審判です。

 拒絶査定不服審判での審理で「拒絶理由を発見できない」という状態になれば「特許を認める」という特許審決が下されることになります。

<特許庁の審判業務>
 「拒絶査定」という審査官の最終処分は、特許庁という行政庁が下した処分になります。通常、行政処分に不服がある場合は訴えを裁判所(地方裁判所)に提起することになります。

 これに対して、特許法では、審査結果の妥当性を判断するための手段として「審判」の制度を整備しています。

 審判は、審査官が単独で行った審査の見直しに位置づけられますが、行政処分に対する不服申し立てを地方裁判所に提起するのではなく、特許庁の審判部が地方裁判所に代わって第一審としての機能を有し、民事訴訟法などで定められた厳正な手続で審理を行うものです。

 このため、拒絶査定不服審判の結論である拒絶審決に対して不服を申し立てる場合は、通常の第一審にあたる東京地方裁判所に出訴するのではなく、東京高等裁判所の知財専門部に位置付けられている知的財産高等裁判所に「拒絶審決取消訴訟」を提起することになります。

 拒絶査定不服審判は、3人あるいは5人の審判官が合議体を構成して慎重に審理を行います。合議体を構成する審判官は、特許庁の審査官として一定のキャリア(一般的に10数年)を積み、法律で定められた研修を終了した者に限られています。

 審査の上級審にあたる拒絶査定不服審判で、審判官が3名または5名で合議し、職権による調査も行った上で、審査官が下していた拒絶査定が妥当であったか否かが審理されます。

<特許出願と拒絶査定不服審判>
上述したように、審査請求は特許出願日から3年以内であればいつでも行うことができ、審査請求後に特許庁からの審査結果が通知されるまでに平均で11カ月を要するとされていて、拒絶査定を受けてから3カ月以内であれば拒絶査定不服審判を請求できます。

 「特許行政年次報告書2024年版」によると、特許出願の中の75%~80%程度について審査請求が行われ、審査を受けたものの中の70~80%程度が特許査定を受け、拒絶査定を受けたものの中の25~30%程度について拒絶査定不服審判請求が行われているようです。

 後述するように、拒絶査定不服審判請求と同時であれば特許請求の範囲を補正できますが、この補正は、新規事項の追加が許容されないことは当然として、(ア) 請求項の削除、(イ) 請求項の限定的減縮、(ウ) 誤記の訂正、(エ) 拒絶理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものに限られ、更に、(イ)の請求項の限定的減縮を目的とするものについては、特許出願の際に独立して特許可能(=新規性欠如・進歩性欠如、等の拒絶理由を有していない)であることが必要です。

 また、審判請求時の補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断が示された発明をそれと技術的特徴の異なる別発明に変更する補正(いわゆる、シフト補正)はできません。

 一方、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3カ月以内であれば、分割出願を行って、新たな特許出願として特許庁の審査を受けることが可能です(特許法第44条第1項第3号)。

 そこで、拒絶査定を受けたものの中で拒絶査定不服審判請求に進むのが25~30%程度であるという事情には、拒絶査定不服審判請求を行うことなく、拒絶査定を受けた特許出願についてはそれ以上の審査継続を断念し、拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3カ月以内に分割出願が行われるケースが影響を与えているのかもしれません。

 なお、「審判請求成立割合」は、「特許行政年次報告書2024年版」によると、拒絶査定不服審判請求成立割合=審査官が行った拒絶査定が取り消されて特許成立する割合は70%程度を越えています。

 拒絶査定を受けた中で拒絶査定不服審判請求に臨むものは25~30%程度ですから、「拒絶査定」が下された場合であっても、拒絶理由を解消する道筋がある、等の何らかの展望や、特許出願人が特許取得に強い意欲をもっている発明について拒絶査定不服審判請求されている結果、審判請求された中の70%程度以上に特許が認められる結論になっているのかもしれません。

<拒絶査定不服審判の概要>
 以下、特許庁のウェブサイトに公表されている拒絶査定不服審判(審判便覧)を参照して拒絶査定不服審判の概要を紹介します。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

<審判請求の対象>
 拒絶査定不服審判は、拒絶査定を受けた者がこれに不服であるときに、査定の当否を判断するために、さらに事件の審理をするものです。そこで、拒絶査定不服審判の請求の対象は「拒絶をすべき旨の査定」です(特許法第121条第1項)。当然のことながら、拒絶理由を発見できないので「特許を認める」としている「特許査定」に対して審判請求することはできません。

<審判請求人>
 審判請求人は、拒絶をすべき旨の査定を受けた者です(特許法第121条第1項)。

 なお、複数の特許出願人による共同の特許出願について拒絶査定不服審判を請求する時には共有者の全員が共同して拒絶査定不服審判を請求しなければなりません(特許法第132条第3項)。

 複数人による共同の特許出願でありながら一部の特許出願人のみが拒絶査定不服審判請求に臨むことを希望し、他の出願人は審判請求を希望しない場合には、審判請求を希望する特許出願人のみに特許出願人の名義を変更してから審判請求することが必要になります。

<拒絶査定不服審判請求できる時期>
 拒絶査定不服審判請求できるのは、拒絶査定謄本の送達があった日から 3 月以内です(特許法第121条第1項)。

 なお、拒絶査定不服審判を請求する者がその責に帰することができない理由により、拒絶査定謄本送達日から 3 月以内に審判請求することができないときは、その理由がなくなった日から 14 日(在外者 2カ月)以内で上記期間の経過後6月以内にその請求をすることができることになっています(特許法第121条第2項)。

<拒絶査定不服審判の請求の手続>
 拒絶査定不服審判の請求をする者は、特許法第131条に定める方式要件を満たした審判請求書を提出しなければなりません(オンラインで電子データにて提出します)。

 審判請求書には、「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものである、との審決を求める。」という「請求の趣旨」を記載し、拒絶査定を取り消すべき理由を具体的かつ明確に「請求の理由」として記載することになります。

<審判請求手数料>
 拒絶査定不服審判請求の際に特許庁に納付する審判請求料は特許請求している発明の数(特許請求の範囲に記載している請求項の数)に応じて増加します。

 基本料金:49,500円+請求項の数×@5,500円を特許庁へ納付します。

■ニューストピックス■

●世界の特許出願件数が過去最高を更新(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)は、「世界知的財産指標報告書」を発表しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

報告書によると、2024年の世界の特許出願件数は約372万件と前年より4.9%増え、過去最高を更新しました。中国やインドの出願件数が大幅に増加し、全体を押し上げました。

国別の出願件数では、中国が約180万件(前年比9.3%増)で世界1位を維持。次いで米国 (501,831件) 、日本 (419,132件) 、韓国(295,722件) 、ドイツ (133,485件) が続きました。インドは、6年連続で2桁成長を達成し、2024年は19.1%増となりました。

技術分野では、「コンピューター技術」が最も多く、全体の13.2%を占めました。次いで多かったのは電気機器、計測技術、デジタル通信、医療技術でした。

24年の世界の商標出願総数は1523万件で前年比0.1%の微減。24年の世界の意匠出願件数は2.2%増の160万件となりました。

●海賊版サイトでの「ただ読み」被害8.5兆円(対策団体調査)
出版社や通信事業者などでつくる海賊版対策団体「ABJ」は、インターネット上に日本の漫画や小説を無断掲載している海賊版サイトへのアクセスによる「ただ読み」の被害額が推計で年8・5兆円に上るとの調査結果を発表しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

報告書によると、海賊版サイトのうち日本の出版物(漫画、小説など)を掲載している913サイトを対象に調査を実施。その結果、123か国・地域から計28億回のアクセスがあり、総滞在時間は7億時間に上りました。

30分間滞在するとコミックス(単行本)1冊分(500円)が読まれたとみなして試算しました。それによると、「ただ読み」の被害額は7048億円(14億冊分)と推計。年換算で8・5兆円に達し、昨年1年間の日本のコミック市場(販売額7043億円、出版科学研究所調べ)の12倍に相当するとしています。

●商標の早期審査・早期審理ガイドライン改訂(特許庁)
特許庁は商標の早期審査・早期審理のガイドラインを改訂しました。改訂は令和7年10月1日以降の出願から適用されます。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

2024年4月1日以降、「他人の氏名を含む商標」の登録要件が緩和され、一定の知名度を有する他人が存在せず、商標中の氏名と出願人との間に相当の関連性があり、かつ不正の目的が認められない場合には、他人の承諾を得なくても登録することができるようになりました。

「他人の氏名を含む商標」は、早期審査の対象外とされていましたが、今回、これらの出願についても早期審査の対象に追加されました。

令和7年10月1日以降の出願からは、他人の氏名を含む商標に係る出願も所定の要件を満たせば、早期審査の対象となります。

●「木枯し紋次郎」の著作権侵害を認定(知財高裁)
時代小説「木枯し紋次郎」の主人公を模したキャラクターのイラストを駄菓子の容器に無断で描いたとして、原作者の遺族が菓子メーカーに損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、知財高裁は、請求を棄却した一審・東京地裁判決を取り消し、著作権侵害を認めて約5600万円の損害賠償などを命じました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

    
出典:令和5年(ワ)第70139号判決文

木枯し紋次郎は1971年に雑誌連載が開始され、翌1972年1月にテレビ化。後には映画化もされました。一方、問題となった駄菓子「紋次郎いか」は1972年6月に発売されました。

原告は主人公である紋次郎について、①三度笠をかぶり、②通常より長い道中合羽、③口に長い竹の楊枝をくわえ、④長脇差を携えた姿、という部分で特定する旨を主張。

一審・東京地裁は、「典型的な渡世人スタイルの表現は、歴史的にありふれたもので創作性がない」として請求を棄却しました。

これに対し、知財高裁は、「①〜④の4つの特徴すべてを備えた人物が登場するドラマ等が存在していたとは認められず、イラストはテレビ作品の紋次郎の画像に依拠し、その画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に変更を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現したものであり、イラストに接する者がテレビ作品の紋次郎の画像に係る表現上の本質的な特徴を直接感得することができるから、イラストはテレビ作品の紋次郎の画像の翻案であると認められる」と判断。一審判決を取り消し、被告の著作権(翻案権)侵害を認定しました。

●「知的財産スタートブック」を作成(特許庁)
特許庁は、『経営課題に効く!中小企業のための支援施策ガイド「知的財産スタートブック」』を公表しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

ガイドブックには、中小企業の経営者や知財担当者、自治体や支援機関の担当者が個社の課題や活動段階に応じた支援施策にたどり着くことができるよう、各施策の概要・対象者・支援の効果などがまとめられています。

 また、特許権、商標権、意匠権を取得するメリットなどが紹介されています。このほか、「社員のモチベーション」「新規事業の立ち上げ」「価格競争への対応」「海外展開」「資金調達」など、中小企業が抱える主要な経営課題に対し、解決事例と支援策などを紹介しています。

<編集後記>
当職は、11月6日~10日にマレーシアの首都クアラルンプールで開催されたアジア弁理士協会(APAA)の総会及び関連行事に参加してまいりました。各国の弁理士と対面で交流し、人脈形成を図る機会となりました。   

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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