藤川IP特許事務所メールマガジン 2023年12月号
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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2023年12月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
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┃ ☆知財講座☆
┃(23)発明のカテゴリー
┃ ~「物」の発明、「方法」の発明~
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┃ ☆ニューストピックス☆
┃
┃ ■世界の特許出願件数、過去最高を更新(WIPO)
┃ ■電磁鋼板の特許訴訟で請求を放棄(日本製鉄)
┃ ■生成AIと著作権をめぐる問題で論点を提示(文化庁)
┃ ■5Gなど必須特許でライセンス契約(シャープと華為技術)
┃ ■PCT国際出願費用の支援制度の申請手続が簡素化(特許庁)
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令和6年1月から中小企業等を対象とした「PCT国際出願費用等の支援制度」の申請手続が簡略化されます。今回の制度改正により、より簡素な手続で、手数料の軽減・支援が受けられるようになります。今号では、PCT国際出願の料金支援制度の手続の簡素化について紹介します。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(23)発明のカテゴリー
「物」の発明、「方法」の発明
【質問】
方法で特許をとるよりも物で特許をとる方がよいと言われたことがあります。どのような違いがあるのでしょうか?
【回答】
「方法よりも物で特許をとる方がよい」というのはよく言われることです。なぜこのように言われるのか説明します。
<発明のカテゴリー>
「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」(特許法第68条)というのが特許権の独占排他的な効力になります。
ここで「特許発明」とは特許を受けている発明のことで、「業として」とは個人的家庭的な実施行為は含まれない(第三者の特許権が現存している場合であっても、その特許権に係る特許発明を個人的に、あるいは家庭内で使っているだけであるなら特許権侵害にならない)ことを意味しています。
「実施」については、発明のカテゴリーごとにいかなる行為が実施になるのか定義されています(特許法第2条第3項)。
発明のカテゴリーとして、大きくは、「物」の発明と、「方法」の発明に分類されます。
「・・し、次に・・する」、「・・という工程と、・・という工程とを備えている」のように、「時」の要素を必須にしているのが「方法」の発明とされ、一方、「時」の要素を必要にしていないのが「物」の発明になります。
機械、器具、装置などの製品的な物や、化学物質、組成物、薬剤などの材料的な物などが「物」の発明の代表例になります。コンピュータプログラムは「物」の発明に分類されています。〇〇システムと表現される発明も「物」の発明に分類されます。
「方法」の発明には「物を生産する方法」の発明と、それ以外の「方法」の発明があります。
「物を生産する方法」以外の「方法」発明を「単純方法」の発明ということがあります。
「単純方法」には、物を使用する方法、物を取り扱う方法、制御方法、測定方法、通信方法、修理方法、等があります。
<「物」の発明>
物の発明については、その物を生産(製造)する行為、使用する行為、譲渡等する行為(例えば、販売)、貸し渡す行為、輸出する行為、輸入する行為、その物についての譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む)が実施行為になります。
特許権者が特許発明を実施する権利を専有しているのですから、第三者が特許発明品を製造、販売、等している場合には特許権侵害であるとして警告書を送り、製造、販売などの行為の差し止めを求める差止請求訴訟や、損害賠償請求訴訟を裁判所に提起することができます。
物の発明の場合には、同業他社が製造、販売している製品を購入し、分解等により分析することで特許発明が使用されているものであるかどうか、すなわち特許権侵害品であるとして追求できるものであるかどうかを確認することができます。
<「単純方法」の発明>
「単純方法」の発明の場合にはその方法を使用する行為が実施行為になります。
この場合、制御方法、測定方法、通信方法、修理方法、等の単純方法が同業他社の工場内などにおいて使用されているかどうかを確認することは簡単ではありません。
<「物を生産する方法」の発明>
「物を生産する方法」の発明の場合にはその方法を使用する行為が実施行為になり、また、その方法により生産した「物」を使用する行為、譲渡等する行為(例えば、販売)、貸し渡す行為、輸出する行為、輸入する行為、その物についての譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む)も実施行為になります。
そこで、「物を生産する方法」を実施して生産した「物」に、当該「物を生産する方法」を使用した痕跡が残るものであるならば、市場で販売されている「物」を購入してきて、分解等により分析することで特許発明が使用されているものであるかどうか、すなわち特許権侵害品であるとして追求できるものであるかどうかを確認することができます。
「物を生産する方法」を実施して生産した「物」に当該「物を生産する方法」を使用した痕跡が残らないものであっても、従来は、大量に市場に出回ることがなかった「物」が、当該特許取得した「物を生産する方法」が特許出願公開された後に同業他社から市場に大量に提供されるようになった場合には、当該特許取得した「物を生産する方法」が勝手に使用されている可能性があると考えられます。
<「物」、「方法」での特許取得>
以上で説明したように、発明のカテゴリーに応じてどのような行為が特許権侵害になるのか相違があり、単純方法の発明や、物を生産する方法の発明の場合には、第三者の特許権侵害行為を発見して、特許権侵害であるとして排除することが、物の発明に比較して容易ではないと考えられています。
同業他社の工場内でしか使用されない「単純方法」であって、特許権侵害で追及することが容易でない場合には、特許出願を行わずに会社の営業秘密、ノウハウとして保護を図ることが検討されるのはこのためです。
しかし、「物」の発明の場合にも、特許出願を行うかどうかを検討する際、遅かれ早かれ同業他社もこの技術段階に到達し、開発・発明すると思われるようなものである場合には一日でも先に特許出願した者でなければ特許取得が認められないことを考慮して特許出願することがあります。
このようなことは「単純方法」の発明、「物を生産する方法」の発明の場合にも当てはまります。
「方法発明だから」ということで特許出願を行わないでいたところその方法発明について他社が特許出願して特許権取得し「当社では特許取得した当社独自の〇〇方法を使用しています。」と他社が積極的に宣伝、営業活動を行うようになってしまった、となることもあります。
特許出願を行わずに営業秘密、ノウハウで保護を図るのか、それよりも他社に先がけて特許出願して独占排他権たる特許権の取得を目指す方がよいのか、その際、「物」、「単純方法」、「物を生産する方法」どのような表現で特許取得を目指すか、専門家である弁理士に相談されることをお勧めします。
<次号の予定>
特許発明品である物(機械、器具、装置など)の外観、形態は意匠権(意匠登録)で保護される対象になります。次回は、意匠登録で保護されるものと特許権で保護されるものとの間にどのような相違や関係性があるのか紹介します。
■ニューストピックス■
●世界の特許出願件数、過去最高を更新(WIPO)
世界知的所有権機関(WIPO)は、年次報告書「世界知的財産指標報告書2023」を発表しました。それによると、世界における2022年の特許出願件数は、前年比1.7%増の約345万件となり、過去最高を更新しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
中国や米国、インドなどの出願件数の増加が全体数を押し上げました。国別では中国の出願件数が引き続き1位。前年比2.1%増の161万9268件で、世界全体の46.8%を占めています。
2位の米国は前年比0.5%増の59万4340件。
日本は3位で0.1%増の28万9530件。インドは、前年比31.6%増と大幅に増加しました。
アジアにおける特許出願件数は、全世界の67.9%を占め、商標出願では67.8%、意匠出願はでは70.3%を占めています。
●電磁鋼板の特許訴訟で請求を放棄(日本製鉄)
鉄鋼最大手の日本製鉄は、自社の鉄鋼製品の特許を侵害されたとして、トヨタ自動車と三井物産に損害賠償を求めていた訴訟で、この請求を放棄したと発表し、事実上、訴えを取り下げました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
日本製鉄は2021年10月、ハイブリッド車などのモーターに使われる「無方向性電磁鋼板」と呼ばれる鉄鋼製品について、自社の特許を侵害されたとして、中国の鉄鋼大手・宝山鋼鉄と、宝山鋼鉄から製品の供給を受けたトヨタ自動車に対して、それぞれ約200億円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴していました。
その後、取引に関わったとして三井物産も提訴していました。
「無方向性電磁鋼板」は、モーターのエネルギー損失を減らす特性を持ち、高度な製造技術が求められます。日本製鉄は、成分の配合割合などで特許を取得しており、宝鋼がトヨタ自動車に納めていた電磁鋼板が特許侵害にあたると訴えました。侵害品を使ったり販売したトヨタ自動車も特許侵害にあたると主張していました。
請求を放棄した理由について、日本製鉄は「カーボンニュートラルに向けて、各国間の競争が激化する中、係争を続けることは日本の産業競争力強化にとって好ましいものではない」とコメントしています。
一方、宝山鋼鉄に対しては、訴訟を継続するとしています。
●生成AIと著作権をめぐる問題で論点を提示(文化庁)
生成AI(人工知能)と著作権保護のあり方について検討している文化審議会の小委員会は、生成AIによる著作権侵害問題などについて、論点を提示しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
現行の著作権法では、AIがインターネット上の文章や画像などの著作物を読み込む機械学習は、原則、権利者の許諾がなくても認められています。
ただし、「必要と認められる限度」を超える場合や、「著作権者の利益を不当に害する場合」は利用できないとされていますが、その範囲は不明確です。小委員会では、生成AIと著作権保護の在り方について、文化庁がこれまでの議論を整理し、論点を提示しました。
<論点として示された主な項目>
①AIによる機械学習のうち、どのような行為が著作権法上の「著作権者の利益を不当に害する場合」に該当するか
②既存の著作物と類似するAI生成物が、侵害か否かをどう判断するのか
③AIで作った作品にどこまで著作物性が認められるか
④著作権侵害への差し止め請求の範囲など
●5Gなど必須特許でライセンス契約(シャープと華為技術)
シャープと中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、通信規格に関する必須特許のクロスライセンス契約を締結したと発表しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
シャープとファーウェイの発表によりますと、今回の締結は、規格標準化における協力を促進するものとしており、グローバルでの技術標準化を目指す取り組みの一環であるとしています。ファーウェイは高速大容量通信規格「5G」で世界最先端の技術を持つ一方、シャープも「5G」の規格などに関する必須特許を6,000件以上保有しています。
今回結ばれた契約により、両社は関連する「5G」などの通信関連の特許などを相互に利用することができるようになります。
●PCT国際出願費用の支援制度の申請手続が簡素化(特許庁)
中小企業等を対象とした「PCT国際出願費用等の支援制度」について、令和6年1月から申請手続が簡略化されます。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
令和6年1月1日以降に行う日本語の国際出願又は国際予備審査請求に係る国際出願手数料、取扱手数料については、国際出願促進交付金の申請手続を不要とし、手続時に現行手数料の1/4から1/2に相当する金額で納付することとなります。
現在、国際出願時に納付しなければならない手数料に関する中小企業等のための手数料の支援措置は、2つの制度が併存しています。
国際出願時の「送付手数料」及び「調査手数料」、予備審査請求時の「予備審査手数料」については、国際出願に係る手数料軽減措置の対象となっていて、手続と同時に軽減申請書の提出することで、所定の金額の1/4から1/2に相当する額を納付することができます。
一方、「国際出願手数料」「取扱手数料」については、手数料軽減ではなく交付金制度の対象であり、手続時に費用の満額を納付した後、国際出願促進交付金制度を利用するための申請が必要でした。
適用される支援制度や手続が異なっていたため手続が煩雑となっていましたが、今回の改正により、PCT国際出願の料金支援制度が一本化され、より簡素な手続で、手数料の軽減・支援が受けられるようになります。
なお、対象者の要件及び軽減割合についての変更はありません。
<編集後記>
早いもので年内最後のメルマガとなりました。師走のお忙しい中、最後までお読み頂いた皆様には感謝申し上げます。
来年もどうぞ宜しくお願い致します。
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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com
<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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