藤川IP特許事務所メールマガジン 2026年1月号
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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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2026年1月号
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┃ ◎本号のコンテンツ
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┃ ☆知財講座☆
┃(48)拒絶査定不服審判請求(2)
┃ ~審判請求時の特許請求の範囲の補正、前置審査~
┃
┃ ☆ニューストピックス☆
┃
┃ ■2025年J-PlatPatの検索ランキングを発表(INPIT)
┃ ■特許権の権利行使の課題など調査(特許庁)
┃ ■米ディズニー、動画生成でオープンAIと提携
┃ ■「職場のロリエ」が日本ネーミング大賞
┃ ■カシオの「発明記念館」が国の登録有形文化財に
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新年明けましておめでとうございます。
本年も皆様のお力になれますよう、知財サービスのより一層の向上を目指す所存です。
本年もお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(48)拒絶査定不服審判請求(2)
~審判請求時の特許請求の範囲の補正、前置審査~
前回に引き続いて拒絶査定不服審判請求について紹介します。
<拒絶査定不服審判請求時に行える特許請求の範囲の補正>
特許出願について拒絶査定不服審判を請求する場合、出願人は、審判請求と同時にするときに限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正できます(特許法第17条の2第1項第4号)。特許庁ウェブサイト「拒絶査定不服審判の請求についての審理」では次のように説明されています。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
<A.特許請求の範囲の補正で許容される目的>
拒絶査定不服審判請求時に行う「特許請求の範囲」の補正は以下のア~エのいずれかを目的にするものに限られています(特許法第17条の2第5項)。
ア 請求項の削除
イ 請求項の限定的減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)なお「請求項の限定的減縮」を目的とする特許請求の範囲の補正については、補正後の請求項に記載されている発明が、特許出願の際に、新規性、進歩性などの特許要件を具備していて特許可能であることが要求されます(独立特許要件)(特許法第17条の2第6項、特許法第126条第7項)。
ウ 誤記の訂正
エ 拒絶理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明
<B.新規事項追加不可>
拒絶査定不服審判請求時に行う補正についても、それまでに行う補正と同じく、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でない新規事項を追加する補正はできません(特許法第17条の2第3項)。
<C.シフト補正の禁止>
拒絶査定不服審判請求時の補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断が示された発明をそれと技術的特徴の異なる別発明に変更する補正はできません(特許法第17条の2第4項)。
<要件を満たしていない補正の取り扱い>
拒絶査定不服審判請求時に「特許請求の範囲」について行った補正が上述したA、B、Cの要件を満たしていない場合、その補正は却下されます(特許法第159条第1項、特許法第53条)。
<拒絶査定不服審判と「同時」に行う補正>
拒絶査定不服審判請求するときは「審判請求と同時にするときに限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正」できます(特許法第17条の2第1項第4号)。
この「同時」について、「特許の拒絶査定不服審判請求に伴う補正の時期的要件の『同時』とは『同日』のことですか。オンライン手続でも『同日』に提出をすれば良いですか?」という質問に対して特許庁ウェブサイト「拒絶査定不服審判Q&A」では次のような説明が行われています。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
「拒絶査定不服審判請求に伴う明細書等の補正については、『同日』ではなく、審判請求と『同時』に手続をする必要があります。特許の拒絶査定不服審判請求と補正書を、同時に提出しなかったときには、当該補正は却下され、当該審判請求は、(後述する)前置審査を経由せずに審判官合議体が補正前の内容について審理を行うことになります。したがって、補正書は、必ず審判請求と同時に提出するように気をつけてください。」
<前置審査>
拒絶査定不服審判請求の中で、審判請求時に、明細書等について補正があったものは、審判官合議体による審理に先立ち、再度、審査に付されることになっており、これを「前置審査」といいます(特許法第162 条)。特許審査基準に記載されている「前置審査」の項目を参照して説明します。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
拒絶査定不服審判において拒絶査定が覆るものの大部分は、拒絶査定を受けた後に特許請求の範囲について補正がされたものであるという実情があります。この実情を考慮して、拒絶査定不服審判請求時に特許請求の範囲が補正された場合に、まず、その拒絶査定をした審査官が再審査を行うようにしたものです。
拒絶査定を下した審査官であれば、当該特許出願の内容や拒絶理由の妥当性について新しく最初から検討開始する審判官よりは、その出願に対する知識を十分に活用して、拒絶査定不服審判請求時に行われた「特許請求の範囲」に対する補正によって拒絶査定の理由(=拒絶理由)が解消されたかどうかを、容易かつ迅速に判断することが可能です。
そこで、審判官が処理すべき事件の件数を減らし、審判の促進を図るという趣旨で、拒絶査定不服審判請求時に特許請求の範囲が補正された場合には、その拒絶査定をした審査官が再審査するようにしたものです。
拒絶査定不服審判請求と同時に明細書、特許請求の範囲を補正する手続補正書を提出しますと、直ちに、特許庁から「前置審査移管通知」が届きます。これが、審判官合議体による審理に先立って前置審査が行われる、という特許庁からの通知になります。
<前置審査の手続>
前置審査では、審査官は、原査定(拒絶査定)の理由が解消されたと判断し、他に拒絶理由を発見しない場合は、原査定を取り消し、特許査定をすることになります。
一方、「原査定を取り消し、特許査定をする」とできない場合、審査官は、原則として、前置報告をすることになっています。前置審査を行った審査官が前置報告しますと、拒絶査定不服審判請求は審判官合議体に移管されて審理されるようになります。
なお、この場合、「前置審査解除通知」が特許出願人(あるいはその代理人弁理士)に届きます。「前置審査解除通知」が届くことで、特許出願人は、「拒絶査定不服審判請求時の補正では拒絶理由が解消されない」と拒絶査定時の審査官が判断したことを理解できます。
上述したように、前置審査では「原査定を取り消し、特許査定をする」あるいは「前置報告をする」対応になりますが、以下の(1)又は(2)に該当する場合、前置審査を行っている審査官は、拒絶理由を通知し、特許出願人に意見書提出・補正書提出の機会が与えられることになっています。
(1) 審判請求時の補正が適法であり、原査定の理由は解消されたと判断したものの、新たな拒絶理由を発見した場合であって、発見した新たな拒絶理由が、その補正によって新たに通知する必要が生じた拒絶理由のみである場合。前置審査は拒絶査定に至るまでの審査をやり直すものではないため、発見した拒絶理由が、拒絶査定不服審判請求時の補正によって新たに通知する必要が生じた拒絶理由のみである場合に限り、拒絶理由が通知されることになっています。
(2) 解消していないと判断した原査定の理由又は新たに発見した拒絶理由を解消するために請求人がとり得る対応を審査官が示すことができる場合であって、請求人との間で意思疎通を図った結果、合意が形成された場合。
<拒絶査定不服審判の中で前置審査に進む割合>
「特許行政年次報告書2025年版」によると、拒絶査定不服審判請求事件の中の9割近くが前置審査に進んでいます。そして、前置審査に進んだものの中の6割程度は「原査定を取り消し、特許査定をする」となって特許成立しています。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
拒絶査定不服審判請求に進んだ場合、7割程度が特許成立に至っていますが、その中のほとんどは、前置審査において特許査定になったものです。
審査段階での拒絶理由に対応する際には、一般的に、できるだけ特許権の効力範囲が広い状態で拒絶理由解消を目指す補正を行います。
このため、もう少し踏み込んで補正を行うことで、拒絶理由を解消可能であることが多く、前置審査で「原査定を取り消し、特許査定をする」となることが多いのではないかと思われます。
この意味で、審査段階の拒絶理由対応で、可能であれば、審査官面接を行う、あるいは、審査官に事前に意見書(案)・手続補正書(案)を提示して検討いただき意見交換の機会を設けていただく等の対応を行うのは意義のあることだと思われます。
なお、拒絶査定不服審判請求を行う前に拒絶査定を下した審判官に連絡をとって前置審査を受けるための補正内容について意見交換を行う、あるいは、「前置審査移管通知」を特許庁から受けた後に審査官に連絡を取って、拒絶査定不服審判請求時の補正内容について説明させていただく機会を設けるよう依頼する等の対応を行うことも可能です。
■ニューストピックス■
●2025年J-PlatPatの検索ランキングを発表(INPIT)
INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)は、令和7年 (令和7年1月~11月) の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)における特許・意匠・商標文献へのアクセス状況を発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
J-PlatPat における特許文献等へのアクセス数は、当該特許文献等に記載されている技術自体やビジネス上の注目度等、社会的な関心を示唆する一つの指標と言えます。
特許(実用新案)、意匠、商標の検索ランキング1位は下記のとおりです。
<特許(実用新案)>
1位はコクヨ株式会社の「消しゴム」(
特許4304926)。この特許をもとに商品化されたカドケシ®は商品名の「カドケシ®」で
商標権と、商品の構造で
特許を取得、10個のキューブをつなげたカドが28個あるデザインで
意匠登録されています。昨年も2位にランクインしており、非常に高い関心を得ていることがわかります。

<意匠>
1位は株式会社batonの「
早押し解答機」(意匠登録1779915)。これは特許庁と、株式会社batonが運営する「QuizKnock」の
コラボ動画企画で生まれたもので、学校の教室で授業で使うために考案されたそうです。コラボ動画では、現役審査官に登録の可能性を指摘され、実際に2024年の9月に登録になっています。

<商標>
1位はキッコーマン株式会社の「
萬」の字のロゴマーク(登録0050131/46)。元のロゴマークは明治から続く商標で現在も登録が維持されています。※今回のランキング1位のマークは、
防護標章です。

●特許権侵害による権利行使の課題など調査(特許庁)
特許庁は、国内企業が有する特許権に対する侵害の実態調査等を実施していますが、このほど、特許制度小委員会に実態調査の途中経過を報告しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
それによると、自社の特許権を侵害された又は侵害された可能性があると感じた経験がある企業は、63.4%でした。
企業規模では、大企業・大企業以外で比較すると、大企業で「経験がある」と回答した割合が72.7%、大企業以外で「経験がある」と回答した割合が48.3%でした。
また、権利侵害を認識した場合に権利行使ができるか否かについては、「原則として対抗手段をとらない」者は2.2%に留まりますが、「場合によっては対抗手段をとる」者は66.6%となっています。
このうち、権利行使ができない主な理由としては、①コストに比して損害賠償額が少ないと見込まれること、②侵害の確証に疑義があること、③権利行使のためのリソース不足、④取引関係に影響が見込まれることが挙げられています。
特許庁は、権利行使をして回復される利益に比べて、権利行使をすることに伴うハードル(コスト負担、立証負担や取引関係への影響)により、侵害に対する権利行使を躊躇する実態がうかがわれるとしています。
●米ディズニー、動画生成でオープンAIと提携
米ウォルト・ディズニーは、人工知能(AI)を展開する「オープンAI」と資本提携し、動画生成AI「Sora(ソラ)」でキャラクターを自由に使えるようにすると発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
発表によると、ディズニーはオープンAIに10億ドル(約1550億円)を出資。3年間のライセンス契約により、オープンAIの動画生成AI「Sora(ソラ)」で、ユーザーはミッキーマウスなど、200以上のキャラクターを文章による指示で簡単に生成できるようになります。
また、ユーザーが生成した動画の一部は、動画配信サービス「ディズニー・プラス」でのストリーミング配信もできるようになります。
ディズニーは、これまで「ソラ」に対し、使用不許可の姿勢をとってきましたが、技術進化を見据え、AIから対価を得る新たなビジネスモデルへと戦略を転換しました。
オープンAI側はキャラクターを利用する権利に対し補償金を支払うとしています。ディズニー側にはAI時代に対応した収益源を確保する狙いもあるとみられます。
●「職場のロリエ」が日本ネーミング大賞
一般社団法人日本ネーミング協会主催の「日本ネーミング大賞2025」で、花王株式会社の「職場のロリエ」が大賞を受賞しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
「職場のロリエ」は、トイレットペーパーのように職場のトイレに生理用品を備品として設置することを推進するプロジェクトの名称。職場で使いやすいことをイメージさせるネーミングが高く評価されました。
同社では、「ネーミング開発に至っては、オフィス勤務の人だけでなく、工場、保育所、病院、学校など、働く人がいるすべての職場のトイレに当たり前に生理用品が備品化される世の中になってほしい、という思いを込めて『職場』というワードにこだわりました」とコメントしています。
最優秀賞には、大関株式会社の 「One CUP」、アキレス株式会社の「瞬足」、西日本旅客鉄道株式会社の 「ICOCA」、株式会社ほっかほっか亭総本部・株式会社ハークスレイの「ほっかほっか亭」などが選ばれました。
また、長く文化に貢献した名称を称えるレジェンド賞として、「アイスノン」「シヤチハタ」「養命酒」 の3つが受賞しました。
●カシオの「発明記念館」が国の登録有形文化財に
文化庁の文化審議会は、カシオ計算機株式会社の創業者の一人で、発明家の樫尾俊雄氏の旧私邸「樫尾俊雄発明記念館」などを登録有形文化財に登録するよう答申しました。正式登録後、国の登録有形文化財となります。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
樫尾俊雄氏は、カシオ計算機の基幹事業となった計算機や電卓、時計、電子楽器を開発した発明家。
発明記念館は、日本のエレクトロニクス産業の発展に貢献した発明家・樫尾俊雄氏の功績を後世に伝えるために設立。世界初の小型純電気式計算機「14-A」や科学技術用計算機「AL-1」のほか、樫尾氏の後を継いだエンジニアたちが生み出した「カシオミニ」などの画期的製品も展示しています。
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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
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名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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