藤川IP特許事務所メールマガジン 2026年2月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                        2026年2月号
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┃ ◎本号のコンテンツ
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┃ ☆知財講座☆
┃(49)拒絶理由に対して意見書とともに提出する実験結果の報告書

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■オンライン発送制度の改正概要と主な留意事項
┃ ■BGM使用料を歌手にも分配、著作権法改正へ(文化庁)
┃ ■「スヌーピー」運営会社を子会社化(ソニーグループ)
┃ ■日本の海賊版被害、3年で3倍に(経済産業省)
┃ ■2025年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
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特許庁がオンラインで発送する拒絶理由通知書等の特定通知について、本年4月1日以降、新ルールが導入されます。
オンライン発送制度の利用を希望する場合は、新たに「特定通知等を受ける旨の届出」を特許庁へ提出する必要があります。

今号では、オンライン発送制度の改正概要と留意事項を紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(49)拒絶理由に対して意見書とともに提出する実験結果の報告書

【質問】
特許出願の審査で拒絶理由通知を受けました。意見書を提出して反論し、審査官に再考を求める際、意見書での主張内容を裏付ける目的で、これから実験を行い、その実験結果の報告書を添付して提出したいのですが、このようなことはできますか?

【回答】
拒絶理由通知を受けて意見書・手続補正書を提出する際に、意見書での主張内容を裏付ける目的で実験報告書(以下では特許審査基準の記載に合わせて「実験成績証明書」といいます。)を添付することは可能です。その際に注意すべき事項を特許審査基準に説明されているところに従って紹介します。

<審査での意見書及び実験成績証明書の取扱い>
 特許庁が公表している「特許・実用新案審査基準」では、審査での意見書及び実験成績証明書の取扱いが「第I部 審査総論 第2章 審査の手順」の「第4節 意見書・補正書等の取扱い」に記載されています。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

 審査官は、拒絶理由を発見した場合、所定の期間を指定して拒絶理由を通知しなければならず、拒絶理由通知を受けた特許出願人は、意見書を提出し(特許法第50条)、また、指定された所定期間内であれば、明細書等について補正することができます(特許法第 17 条の 2)。

 この場合、特許出願人は実験成績証明書を合わせて提出することができ、審査基準ではその取り扱いについて以下のように説明しています。

 「意見書及び実験成績証明書は、明細書における発明の詳細な説明に代わるものではない。しかし、これらは、出願人が出願当初の明細書等 (以下、この部において「当初明細書等」という。)に記載されていた事項が正しくかつ妥当なものであることを釈明又は立証するために提出されるものである。したがって、審査官は、意見書及び実験成績証明書が提出された場合は、これらの内容を十分に考慮する。」

 このように、「当初明細書等に記載されていた事項が正しくかつ妥当なものであることを釈明又は立証するため」に行った実験結果の報告書であれば、たとえ、拒絶理由通知書を受領した後に行った実験結果の報告書であっても意見書に合わせて提出し、審査官の検討を受けることができます。

<実施可能要件違反を指摘する拒絶理由への対応>
 特許出願では、特許取得を目指す発明を特許請求の範囲に記載すると共に、その詳細な説明を明細書に記載して特許庁へ提出します。

 明細書は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載」する必要があります(特許法第36条第4項第1号)。これを、実施可能要件といい、明細書の記載が実施可能要件を具備していない場合は、拒絶の理由となり、見逃されて特許成立してしまった場合には、特許異議申立の理由、特許無効審判請求の理由になります。

 特許法は、新規・有用な発明を誰よりも先に特許出願することで社会に公開した者に対して、その代償として、特許権成立後であって、原則として、特許出願日から20年を越えない期間、独占排他権である特許権を付与して発明者・特許出願人を保護し、一方で、特許権が消滅した後は、公開された発明をいわゆるジェネリックな技術として誰でもが実施できるようにすることで、産業の発達という法目的(特許法第1条)を図ろうとしています。

 明細書の記載についての実施可能要件はこのような法目的によるもので、特許庁審査官は、審査している特許出願の明細書の記載が実施可能要件を具備していないと認める場合には、その旨を指摘する拒絶理由を通知することになります。

 この場合の対応として特許出願人が意見書と共に提出する実験成績証明書について特許審査基準(第II部 明細書及び特許請求の範囲 第 1 章 発明の詳細な説明の記載要件 第 1 節 実施可能要件(特許法第 36 条第 4 項第 1 号))には次のように記載されています。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

「出願人は、実施可能要件違反の拒絶理由通知に対して、意見書、実験成績証明書等により反論、釈明等をすることができる。例えば、出願人は、審査官が判断の際に特に考慮したものとは異なる出願時の技術常識等を示しつつ、そのような技術常識等を考慮すれば、発明の詳細な説明は、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえることを、意見書において主張することができる。また、出願人は、実験成績証明書により、このような意見書の主張を裏付けることができる。」 「反論、釈明等により、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすとの心証を、審査官が得られる状態になった場合は、その拒絶理由は解消する。そうでない場合は、実施可能要件違反の拒絶理由に基づき、拒絶査定をする。」

 「ただし、発明の詳細な説明の記載が不足しているために、出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明が、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない場合には、出願後に実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明の記載不足を補うことにより、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると主張したとしても、拒絶理由は解消されない。

 そこで、そもそも、明細書の記載が「出願時の技術常識を考慮しても、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない場合」には、実験成績証明書を提出して明細書の記載不足を補おうとしても許容されません。特許出願の際の明細書、特許請求の範囲の記載について十分に注意しておく必要があります。

<サポート要件違反を指摘する拒絶理由への対応>
 上述した特許請求の範囲の記載については「特許を受けようとする発明が『発明の詳細な説明』=『明細書』に記載したものであること」が要求されます(特許法第 36 条第 6 項第 1 号)。

 特許請求の範囲の記載に際して「発明の詳細な説明」=「明細書」に記載した発明の範囲を超えて記載してはならないことを要求するものです。「発明の詳細な説明」=「明細書」に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば、公開していない発明について特許権を請求することになるので、それを防止すべく要求されています。「特許請求している発明は明細書の記載によって支えられていなければならない」ということで、サポート要件と呼ばれています。

 サポート要件を具備していない場合は、拒絶の理由となり、見逃されて特許成立してしまった場合には、特許異議申立の理由、特許無効審判請求の理由になります。

 特許庁審査官は、審査している特許出願の特許請求の範囲の記載がサポート要件を具備していないと認める場合には、その旨を指摘する拒絶理由を通知することになります。

 この場合の対応として特許出願人が意見書と共に提出する実験成績証明書について特許審査基準(第 II 部 明細書及び特許請求の範囲 第 2 章 特許請求の範囲の記載要件 第 2 節 サポート要件(特許法第 36 条第 6 項第 1 号))では、「サポート要件違反の拒絶理由通知に対して、意見書、実験成績証明書等を提出することにより反論、釈明等をすることができる」とし、サポート要件違反の拒絶理由の中でも「出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合」が指摘された場合の対応として、以下の記載がされています。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

 「出願人は、例えば、審査官が判断の際に特に考慮したものとは異なる出願時の技術常識等を示しつつ、そのような技術常識に照らせば、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できることを、意見書において主張することができる。また、実験成績証明書によりこのような意見書の主張を裏付けることができる。

 「反論、釈明等により、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすとの心証を、審査官が得られる状態になった場合は、その拒絶理由は解消する。そうでない場合は、特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たさない旨の拒絶理由に基づき、拒絶査定をする。

 「ただし、発明の詳細な説明の記載が不足しているために、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない場合には、出願後に実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明の記載不足を補うことによって、請求項に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できると主張したとしても、拒絶理由は解消されない。 (参考:知財高判平成 17 年 11 月 11 日(平成 17年(行ケ)10042 号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決)

 そこで、そもそも、明細書の記載が「不足しているために、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、明細書に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない場合」には、実験成績証明書を提出して明細書の記載不足を補おうとしても許容されません。特許出願の際の明細書、特許請求の範囲の記載について十分に注意しておく必要があります。

<新規性・進歩性欠如を指摘する拒絶理由への対応>
 特許審査基準(第III部 特許要件 第2章 新規性・進歩性(特許法第29条第1項・第2項) 第 3 節 新規性・進歩性の審査の進め方)では、新規性・進歩性が欠如しているとの拒絶理由を受け取った場合、特許出願人は「手続補正書を提出して特許請求の範囲について補正をしたり、意見書、実験成績証明書等により反論、釈明をしたりすることができる。」とされています。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

 ただし、冒頭の「審査総論」のところで紹介したように、「当初明細書等に記載されていた事項が正しくかつ妥当なものであることを釈明又は立証するため」に行った実験成績証明書等であることが要求されます。どのような実験成績証明書であっても、新規性・進歩性欠如を指摘する拒絶理由を解消する証拠として考慮されるとは限りません。

 この点、特許審査基準(第IV部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正 第2章 新規事項を追加する補正(特許法第 17 条の 2 第3 項))では、明細書の記載に「発明の効果」を追加する補正について、「一般に、発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものであるので許されない」が、「当初明細書等に発明の構造、作用又は機能が明示的に記載されており、この記載から発明の効果が自明な事項である場合は、その発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものではないので許される。」としています。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

 そこで、実験成績証明書で立証する本願発明の優れた効果が、「当初明細書等に発明の構造、作用又は機能が明示的に記載されており、この記載から自明な事項」に当たる場合には、そのような実験成績証明書は、新規性・進歩性欠如を指摘する拒絶理由を解消する証拠として考慮されることになるのではないかと思われます。

■ニューストピックス■
●オンライン発送制度の改正概要と留意事項(2026年4月1日施行)
2026年4月1日に施行される「不正競争防止法等の一部を改正する法律」に基づき、特許庁のオンライン発送制度が改正されます。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

本改正によりオンラインで発送される拒絶理由通知書等の特定通知について、申請人がインターネット出願ソフトを用いて受取可能となった日の翌日から、申請人によって受け取られることなく10日を経過した時に、申請人に到達したとみなす制度が導入されます。この規定によって到達したとみなすことを「経過到達」と呼びます。

経過到達した時点で発送日が確定するため、特定通知等の発送又は到達を起算点とする期間が始まることになります。また、経過到達となった特定通知等を書面で郵送(発送)することはありません。

<特定通知等を受ける旨の届出>
2026年4月1日以降、オンライン発送機能を利用したい場合には、新規に「特定通知等を受ける旨の届出」を特許庁へ提出する必要があります。

本届出は、令和7年12月末からインターネット出願ソフト(バージョン i6.10)の初回起動時から画面上の操作で提出可能となっています。現在、オンライン発送利用者であっても「特定通知等を受ける旨の届出」の提出をしない場合は、2026年4月1日以降全ての発送書類が書面で郵送(発送)されますのでご注意ください。

経過到達までの期間は、申請人がインターネット出願ソフトを用いて受取可能となった日の翌日から起算して「暦日単位」で算出します。「10日」の算出にあたっては、「開庁日」の1日を「暦日単位」で1日にあたるものとして取り扱います。

特許(登録)証も経過到達の対象となります。特定通知等を受ける旨の届出をした場合、紙の証書は郵送(発送)されませんので、書面(紙)の特許(登録)証が必要な場合、電子データを印刷する等してご利用ください。

また、再交付請求手続を行うことで、書面(紙)の特許(登録)証の再交付を受けることができます。

●BGM使用料を歌手にも分配、著作権法改正へ(文化庁)
文化庁は、飲食店や商業施設などで流すBGMの使用料を、作詞・作曲家だけではなく、歌手や演奏者にも分配するため、新たに「レコード演奏・伝達権」を導入する方針です。文化審議会に著作権法改正の素案を提示しました。

▷詳細はこちら(PDFが開きます)

 現在、小売店や飲食店、商業施設がBGMを流す際、使用料は、日本音楽著作権協会(JASRAC)などの著作権管理団体が徴収し、作詞・作曲家に分配していますが、歌手や演奏者に使用料は支払われていません。著作権法改正で「レコード演奏・伝達権」が導入されれば、歌手や演奏家にも使用料が分配されることになります。

一方、支払う側には、新たにBGM使用料の負担が生じる可能性があります。文化庁は、使用料の具体額や徴収方法は今後検討し、小規模事業者の負担への配慮や国民への周知が必要として、3年程度の準備期間を設けるよう求めています。

●「スヌーピー」運営会社を子会社化(ソニーグループ)
ソニーグループは、スヌーピーで知られる人気漫画「ピーナッツ」の知的財産(IP)を保有するピーナッツHDの株式約41%を約710億円で取得すると発表しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

ピーナッツHDは、世界的に知名度が高い「スヌーピー」や「チャーリー・ブラウン」で知られる「ピーナッツ」シリーズの権利を保有する会社。ソニーグループは、既存の持ち分約39%と合わせて計80%を保有し、ピーナッツHDはソニーグループの連結子会社となります。残りの20%の持分は原作者チャールズ・Ⅿ・シュルツ氏の家族が引き続き保有します。

ソニーグループは、今後、グループのネットワークとキャラクタービジネスのノウハウを最大限活用して、「ピーナッツ」に関わるIPビジネスの拡大と、生誕75周年を迎えた「世界一有名なビーグル犬」のブランド力向上を図るとしています。

「ピーナッツ」は75周年(出典:ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME))

●日本の海賊版被害、3年で3倍に(経済産業省)
経済産業省は、インターネット上の漫画やアニメ、ゲームなど日本発デジタルコンテンツの海賊版による2025年の被害額が、22年の前回調査の約3倍となる5兆7千億円に上るとの調査結果を公表しました。今回初めて調査した偽キャラクターグッズと合わせた被害総額は10兆4千億円に達しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

 被害額の内訳をみると、アニメなどの映像が2.5倍の2兆3千億円、ゲームは5倍の5千億円、音楽が3倍の3千億円と、いずれも大幅に増加しました。初調査したフィギュアやプラモデルなどのグッズは4兆7千億円に上っています。

 経産省によると、漫画の被害はベトナムが最も多く、グッズ関連は中国企業による海賊版の被害が目立つとしています。

日本のコンテンツ産業は、世界で評価が高く、輸出の増加が見込まれる成長産業であることから、経産省は海賊版対策の強化を進めています。

●2025年度知的財産権制度入門テキストを公表(特許庁)
特許庁は「2025年度知的財産権制度入門テキスト」を公開しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

この入門テキストには特許、実用新案、意匠、商標の概要だけではなく、不正競争防止法、著作権、育成者権、地理的表示保護などについても解説されています。

このほか、出願書類の様式や地域の知財総合支援サービス窓口なども掲載されています。

<編集後記>
当職執筆の記事『AIと著作権 ~生成から利用までの論点~』が中部経済新聞(1月15日発行)に掲載されました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知

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E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

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