藤川IP特許事務所メールマガジン 2026年4月号
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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
2026年4月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃
┃ ☆知財講座☆
┃(51)新規事項を追加する補正の禁止(1)
┃
┃ ☆ニューストピックス☆
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┃ ■特許出願件数が大幅に増加(特許庁ステータスレポート2026)
┃ ■「AIが発明者」を認めず、出願者の敗訴が確定(最高裁)
┃ ■偽ブランド品など輸入差し止め、3年連続3万件超(財務省)
┃ ■「ひこにゃん」誕生から20年周年(滋賀県彦根市)
┃ ■「チョコモナカジャンボ」のサウンドロゴが音商標に(森永製菓)
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「特許庁ステータスレポート2026」が公表されました。
同レポートによると、2025年の特許出願件数は、358,317件(前年比16.8%増)と大幅に増加しました。
また、商標出願件数は168,114件(前年比5.9%増)となり、数年続いていた減少傾向から増加に転じました。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(51)新規事項を追加する補正の禁止(1)
【質問】
特許出願を行った後に特許出願で提出していた明細書や図面の記載内容を修正することは可能だが、技術的に新しい事項を追加する修正を行うことはできないとうかがっています。これはどのようなことなのでしょうか?
【回答】
特許出願時の明細書や図面に記載していなかった新しい技術的事項を明細書などに追加する補正は「新規事項を追加する補正」(特許法第17条の2第3項)として禁止されており、拒絶理由(特許法第49条第1項第1号)や、特許異議申立の理由(特許法第113条第1項第1号)、特許無効理由(特許法第123条第1項第1号)になります。
新規事項を追加する補正の禁止について特許庁が公開している情報を参考にして今回と次回の2回に分けて説明します。
<特許審査基準、特許の審査基準のポイント>
特許庁は特許審査基準を公表しています。この特許審査基準は「出願の審査が一定の基準に従って、公平妥当かつ効率的に行われるように・・・」、「特許法等の関連する法律の適用についての基本的考え方をまとめたもの」で、「審査における判断基準」及び「特許管理等の指標」になるものであると説明されています(特許の審査基準のポイント(特許庁 審査第一部 調整課 審査基準室))。
特許審査基準
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
特許の審査基準のポイント
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
これらで説明されている内容に基づいて新規事項を追加する補正の禁止について紹介します。
<願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面の補正>
特許出願の際に特許庁へ提出する書類には、特許請求している発明を文章で説明する「明細書」、「特許請求の範囲」、「要約書」と、発明を図面で説明することができる場合に提出する「図面」があります。
特許出願人は、特許出願の際に提出していた明細書、特許請求の範囲、図面の記載内容を、特許出願後に、補充したり、訂正したりする補正を行うことができることになっています(特許法第17条の2)。
手続の円滑で迅速な進行を図るためには、特許出願人が初めから完全な内容の書類を提出することが望ましいところです。
しかし、特許法では、同一の発明については一日でも先に特許出願を行っていた者でなければ特許を受けることができないという先願主義(特許法第39条)が採用されています。
先願主義の下では、出願を急ぐ必要があること等により、実際には完全な内容の書類を準備できない場合があります。
また、特許庁で審査を受けて拒絶理由の指摘を受けた場合などに、明細書等の記載に手を加える必要が生じることがあります。
これらの事情を考慮して特許出願を行った後に明細書等の記載内容を補充、訂正する補正を行うことが許容されています。
<新規事項を追加する補正が禁止されている理由>
明細書などの記載について補正が行われた場合、その補正の効果はいつから発揮されるのかが問題になります。
「補正が行われた時点から補正の効果が発揮される」という取扱いにすると、特許出願の内容がいつ補充・訂正されるかわかりませんし、どのような内容に、補充・訂正されるか予想できません。このため、将来、特許権という独占排他権が成立する可能性がある特許出願を第三者が監視する負担が増大してしまいます。
そこで、特許法では、明細書等の記載内容を補正すると、補正後の内容で特許出願が行われていたとする取り扱いがなされています。特許出願の時点から補正後の内容であった、とするものです。特許出願時に遡って効果が発揮されるとしていることから、これを補正の遡及効と言います。
このように、補正は出願時に遡って効力を発揮するとしているので、出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面(以下これらをまとめて「当初明細書等」といいます。)に記載した事項の範囲を超える内容を含む補正を出願後に許容すると、上述した先願主義の原則に反することになります。
そこで、出願人を保護すべく、明細書等を特許出願後に補正できることとする一方、先願主義の原則を実質的に確保し、第三者との利害の調整を図るため、補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならない、すなわち、新規事項を追加する補正は行ってはならない、とされたものです。
特許法では、このようにすることによって、以下の機能が果たされると考えています。
(ⅰ)出願当初から発明の開示が十分になされるようにして、迅速な権利付与を担保できる。
(ⅱ)出願当初から発明の開示が十分にされている出願とそうでない出願との間の取扱いの公平性を確保することができる。
(ⅲ) 出願時に開示された発明の範囲を前提として行動した第三者が不測の不利益を被ることのないようにして、第三者の監視負担を軽減することができる。
<補正が新規事項追加にあたるかどうかについての基本的な考え方>
審査官は、補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かにより、その補正が新規事項を追加する補正であるか否か判断するとされています。
そこで、補正によって新たな技術的事項が追加されるならば、それは新規事項追加の補正であるとして、特許出願に対する拒絶理由、成立した特許に対する異議申立理由、特許無効理由になります。
なお、「当初明細書等に記載した事項」とは、「当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項」とされています(知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決)
<補正が新規事項追加になるかどうかの具体的判断>
具体的な判断手法は次の①、②、③ようになるとされています。
- 当初明細書等に明示的に記載された事項にする補正⇒新規事項追加に当たらず許容されます。
ここで、「明示的記載」とは、特許出願時の「明細書」、「特許請求の範囲」又は「図面」に記載されていた事項のことをいいます。
- 当初明細書等の記載から自明な事項にする補正⇒新規事項追加に当たらず許容されます。
ここで、「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、「当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でなければならない。」とされています(特許審査基準)。
なお、補正内容が「当初明細書等の記載から自明な事項」と認められるかどうかについては、次の(i)、(ii)に留意しなければならない、とされています。
(i)補正された事項に係る技術自体が周知技術又は慣用技術であるということだけでは、「当初明細書等の記載から自明な事項」とはいえない。
(ii)当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等の複数の記載から自明な事項と理解する場合もある。当初明細書等の複数の記載とは、例えば、発明が解決しようとする課題についての記載と発明の具体例の記載、明細書の記載と図面の記載等である。
この(ii)の具体例として以下が審査基準に記載されています。
当初明細書等には、弾性支持体を備えた装置が記載されているのみで、特定の弾性支持体について開示されていない。しかし、当業者であれば、出願当初の図面の記載及び出願時の技術常識からみて、「弾性支持体」は「つるまきバネ」を意味していることが自明であると理解するという場合は、「弾性支持体」を「つるまきバネ」にする補正が許される。
- 補正された事項が上述した①、②のいずれにも該当しない場合であっても、 「当初明細書等に記載した事項」との関係において新たな技術的事項を導入するものでなければ、その補正が許容されることがあります。後述する「特許請求の範囲の補正」、「明細書の補正」ごとに特許審査基準で示されている、補正が許容される場合、補正が許容されない場合も考慮して、補正が新規事項を追加するものであるか否か判断されることになっています。
■ニューストピックス■
●特許出願件数が大幅に増加(特許庁ステータスレポート2026)
特許庁は年次報告書「「特許庁ステータスレポート2026」を公表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
同レポートによると、2025年の特許出願件数は、358,317件(前年比16.8%増)と大幅に増加しました。増加の要因としては、2025年12月分の国内出願の急増(82,188件、前年比269%増)が考えられます。2025年の国際特許出願を除く特許出願件数は286,306件(前年比22.4%増)と高い伸びを示しました。
2025年の商標登録出願件数は168,114件(前年比約5.9%増)となり、数年続いていた減少傾向から増加に転じました。2025年の国際商標登録出願を除く商標出願件数は151,544件(前年比約6.3%増)となりました。
2025年の意匠登録出願件数は、31,781件(前年比0.9%減)。2025年の国際意匠登録出願を除く意匠登録出願件数は26,517件(3.7%減)となりました。
●「AIが発明者」を認めず、出願者の敗訴が確定(最高裁)
人工知能(AI)を発明者とする特許出願が認められるかどうかが争われた裁判で、最高裁は、出願者側の上告を退けました。「発明者は人間に限られる」として出願者の請求を棄却した1審・東京地裁と2審・知財高裁の判決が確定しました。
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1、2審判決によると、米国籍の出願者は2020年、食品容器などの特許出願の際、発明者の氏名を「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」として出願。特許庁は21年、「発明者は自然人に限られる」として、人間の氏名を記すよう、補正を命じましたが、出願者が応じなかったため、出願を却下しました。
1審判決は、特許法について、「発明は人間により生み出されると規定していると解される」とし、AIは発明者に含まれないと判断。2審判決は、一審の結論を支持しつつ、「特許法はAIの急激な発達を想定しておらず、AI発明に特許権を与えるかどうかを巡っては、社会に及ぼす影響を踏まえた議論が必要」と言及。立法府で制度設計を検討するよう促しました。
●偽ブランド品など輸入差し止め、3年連続3万件超(財務省)
財務省は、2025年に全国の税関で偽ブランド品など知的財産侵害物品の輸入を差し止めた件数が3万1760件だったと発表しました。
公表開始以来、3番目に多い水準で、3万件超えは3年連続。正規品の価格に換算すると約180億円に上ります。
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偽ブランド品などを含む商標権の侵害が全体の9割を超える2万9685件。品目別では、衣類が1万660件で最も多く、財布やハンドバッグなどのバッグ類が7560件で続いています。
摘発した物品の中では、最近、小中学生を中心に大流行し、品薄状態が続く「ボンボンドロップシール」の偽物や大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」の偽物のぬいぐるみなどが増加しました。
●「ひこにゃん」誕生から20年周年(滋賀県彦根市)
滋賀県彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」が4月で誕生から20年を迎えます。20周年となるのを前に、市は記念ロゴを作成。「ひこにゃん」と命名された日の4月13日には、彦根城内で記念セレモニーを開催する予定です。

(彦根市が製作した「ひこにゃん」20周年の記念ロゴ)
「ひこにゃん」は、2007年に開催した「国宝・彦根城築城400年祭」のPRキャラクターとして誕生。その後、全国各地のご当地祭りなどに登場し、「ゆるキャラ」ブームを巻き起こしました。
彦根市の経済効果にも大きく貢献。「彦根市観光に関する経済効果測定」調査によると、24年の関連グッズ販売額は8億4000万円と、市内の観光消費額の4.5%を占めています。市が運営する「ひこにゃんファンクラブ」の登録者は約3,200人に上ります。
彦根市では「ひこにゃん」のコラボ商品にも力を入れています。同市では、24年から「ひこにゃん」の商標使用料を原則無償にしています。24年度の新規の契約申請は600件を超えています。
●「チョコモナカジャンボ」のサウンドロゴが音商標に(森永製菓)
森永製菓株式会社は、「チョコモナカジャンボ」のサウンドロゴを音商標として出願し、商標登録(登録番号:第7019375号)されたと発表しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
今回登録されたサウンドロゴ「チョコモナカジャーンボ♪」は、2008年からTVCMなどで使用。長年の使用実績などから、独自性と識別力が認められました。
サウンドロゴとは、企業や商品などを象徴するメロディーや効果音のことで、音商標は日本では2015年4月から登録が認められるようになりました。
他にも「ブルーレットおくだけ」「ふじっ子のおまめさん」「高須クリニック」などの登録例があります。
<編集後記>
4月に入りました。
新年度を迎え、気持ちを新たに、これからもお客様にご満足頂ける知財サービスを提供していきます。
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