藤川IP特許事務所メールマガジン 2022年11月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                      2022年11月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(10)特許庁の審査結果を受け取る時期

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■特許審査官とのオンライン面接
┃ ■特許訴訟で当事者以外から意見募集(知財高裁)
┃ ■特許侵害で賠償額にライセンス相当額含める(知財高裁)
┃ ■音楽教室の著作権使用料、生徒の演奏は対象外(最高裁)
┃ ■特許印紙による予納期限、令和5年3月31日まで
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近年、特許庁では、従来の「特許庁での面接」、「出張面接」に加えて、オンライン面接を積極的に実施しています。

特許審査においては、2021年に実施された面接審査1,689件のうち、1,423件をオンラインで実施、昨年比40.2%と大幅に増加しました。

今号では、特許審査官とのオンライン面接について取り上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(10)特許庁の審査結果を受け取る時期
【質 問】
特許出願した発明について特許権の成立が認められるのかどうか、特許庁での審査の結果を受け取ることができる時期はいつ頃ですか?
当社が希望するような時期に審査結果を受け取ることが可能でしょうか?

【回 答】
審査請求を行った後、一般的には、10カ月程度で特許庁から審査の結果を受けとることができますます。

<特許庁が受け付けている審査請求の数>
特許出願した発明について特許の付与を認めることができるかどうか特許庁が検討・判断する審査は、特許出願手続と別個に審査請求が行われた後に開始されます。

近年、日本国特許庁が受け付けている審査請求の数は毎年24万件程度です(特許行政年次報告書2022年版)。

審査請求は特許出願と同時に行うこともできますが、一日でも先を争って行った特許出願で特許請求している発明を改良したより良い発明を後に特許出願した等々の事情が生じることがある等々を考慮して、出願日から3年以内に審査請求することが許されています。

出願日から3年経過しても審査請求が行われない場合、先願の地位(特許法第39条)を確保する特許出願が行われたという事実、出願後1年6月経過した時点で出願内容が特許出願公開公報として特許庁ホームページ(J-Plat Pat)から世界中に公表されその後の特許出願で特許請求される発明に対する先行技術文献の地位を確保したという事実は残りますが、特許出願は消滅します。

その後に復活させて審査を受けるようにすることはできません。

特許庁が公表しているデータによれば、特許出願の中の75%程度が審査請求され、25%程度は審査請求することなしに消滅しているものと思われます。

<審査の結果を受けとれる時期>
審査請求を行っても次の日から直ちに審査が開始されるわけではありません。

特許庁審査官の手元にあるものから順に審査が進められていますので審査請求後、審査の順番が来るのを待つことになります。

特許庁が公表しているデータによれば、審査請求後、特許庁から審査の結果(First Official Action=FA)を受けとるまでの審査順番待ち期間は平均で10.1カ月です(特許行政年次報告書2022年版)。

技術分野により審査速度に相違がありますので、どの技術分野でもこの程度の期間で審査結果を受けとれるとは限りませんが、いちようの目安としては、審査請求後10カ月程度で特許庁の審査結果を受けとることができます。

一回目の審査結果が「特許を認めることができない」という拒絶理由通知である場合には60日以内に意見書、補正書を提出して反論し、審査官に再考を求めることができます。

この手続により拒絶理由が解消すれば「特許を認める」という「特許査定」が下されることになります。一回目の審査結果が拒絶理由通知で、意見書、補正書提出で拒絶理由解消して特許成立するならば、速ければ、審査請求から1年~1年半程度で特許成立します。

<早期審査>
特許庁は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く行う早期審査制度を採用しています。

早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。

早期審査の対象になる出願は(1)実施関連出願、(2)外国関連出願、(3)中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願、(4)グリーン関連出願などです。

ここで「中小企業」とは中小企業基本法等に定める中小企業のこととされており、例えば、製造業の特許出願人が、従業員数300人以下あるいは、資本金の額3億円以下のどちらかの条件を満たしていれば「中小企業の出願である」として早期審査を受けることができます。

特許出願後ただちに審査を受けて早期に特許成立させたい場合、特許出願と同時に審査請求し「早期審査の事情説明書」も提出すれば、出願後3カ月程度で審査結果を受け取り、1年以内に特許権成立させて、出願公開公報が発行されるより前に特許公報が発行されることがあります。

<むすび>
一般的には審査請求後10カ月程度で、また、早期審査を受ければ3カ月程度で審査結果を受けとることが可能です。

特許出願を行った発明についての事業化の進展などを勘案しながら、専門家である弁理士にご相談の上、審査請求を行う時期、早期審査請求を行うかどうか、等々をご検討ください。

<次号のご案内>
次号は、特許調査でライバルメーカーが行っている特許出願を発見したときにどのような対応を行うことが考えられるかご質問に回答します。

■ニューストピックス■
特許審査官とのオンライン面接
特許庁は、リーフレット「DX時代における特許審査官とのコミュニケーション」を公開し、テレワーク中の審査官との電話連絡、オンライン面接の手続やメリット、活用例等について紹介しています。

近年、特許庁では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、従来の「特許庁での面接」、「出張面接」に加えて、オンライン面接を積極的に実施しています。

特許庁に出向いて面接を行う場合、移動の時間や費用がネックとなっていましたが、オンライン面接システムを活用することで、時間や費用を抑えられることからオンライン面接の実施件数が増えています。

特許庁ステータスレポート2022によれば、特許審査においては、2021年に実施された面接審査1,689件のうち、1,423件をオンラインで実施、昨年比40.2%と大幅に増加しました。

また、審判においては、「オンライン口頭審理」を2021年10月に開始し、10月以降に実施された口頭審理20件のうち、13件をオンラインで実施しています。

<オンライン面接のイメージ>
下のイメージ図にあるように、特許出願人は自社の会議室などに設置しているPCから、代理人弁理士は自分の特許事務所に設置しているPCから面接審査に参加できます。

特許庁まで行く必要がなく、また、特許出願人も代理人弁理士も会社、事務所から移動することなく審査官とコミュニケーションを図ることができます。

インターネットに接続可能なPC、ウェブカメラ、ヘッドセット(あるいはマイクとスピーカー)さえそろっていればオンライン面接に参加できます。

オンライン面接用の特別なソフトウェアをインストールする必要はありません。また、オンライン面接で特許庁に対して支払う費用は発生しません。

<引用:特許庁HP「オンライン面接について」>

<オンライン面接の活用例>
オンライン面接では口頭で説明するだけでなく、文書作成ソフト、表計算ソフト、PDFソフト、等の電子データを、ウェブサイトの「ホワイトボード」に貼り付け、参加者の間で共有することや、ホワイトボードに貼り付けた電子データに参加者がマーカーやメモを付すことも可能。

補正案や説明資料を画面共有することで、説明のポイントがわかりやすく、よりよいコミュニケーションが図れます。書類だけでなく、動画を共有することも可能です。

<手続>
オンライン面接は、審査請求してから審査手続きが終了するまでいつでも実施できます。

一般的には実際に審査に入る前や拒絶理由通知を受け取った後に申し込む場合が多いようです。

面接申し込みは、代理人が特許庁審査官に電話を入れて申し込みを行う方法以外に、特許庁がホームページで公表している「面接申し込みフォーム」を使用して申し込みを行うこともできます。

・DX時代における特許審査官とのコミュニケーション
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

・オンライン面接について
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

特許訴訟で当事者以外から意見募集(知財高裁)
知的財産高等裁判所は、インターネット上の動画のコメント表示に関する特許訴訟で、争点について外部の専門家から意見を求める「第三者意見募集制度」を採用することを決めました。

意見募集が行われるのは、動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、動画再生中のコメント表示を巡る配信システムの特許を侵害されたとして、「FC2動画」の運営会社を訴えている訴訟の控訴審。

ドワンゴ側の申し立てに基づき、今年4月施行の改正特許法で導入された「第三者意見募集制度」が採用されました。

判決の影響が大きい訴訟で、裁判所が幅広い観点から検討できるように導入された新たな手続きで、実施されるのは今回が初めて。

「日本版アミカスブリーフ(amicus brief)」と呼ばれ、集まった意見は当事者が証拠として活用できます。

判決の影響が当事者だけでなく国内外の多くの業界に及ぶ可能性があり、国際的な観点からも検討する必要があるとして、裁判所が必要と認めた場合に当事者以外の専門家から意見を募集します。

集まった意見書は、原告側と被告側が内容を確認したうえで、裁判の証拠として活用します。

特許侵害で賠償額にライセンス相当額含める(知財高裁)
大阪市のマッサージチェア販売会社が、マッサージチェアの構造に関する特許を侵害されたとして競合店に賠償請求を行った訴訟の控訴審で、知財高裁は大合議で、一審判決を破棄して特許侵害を認め、損害額をより広範囲に算定できる判断を示しました。

知財高裁の判決では、侵害で生じた特許権者の損害額については、侵害した側がそれによって得た利益などを基に推定した金額に、特許のライセンスを供与したとみなした場合の実施料の算出額も損害額に上乗せできると判断。

これまでより広い範囲で特許侵害の損害額を認定する考え方を示し、被告のファミリーイナダは、原告のフジ医療器に約3億9000万円の損害賠償を命じられました。

一方、同じ2社が大阪地裁で争った別の特許権侵害訴訟では、被告と原告が逆転した形で争われ、特許を侵害したフジ医療器に対し、ファミリーイナダへの28億円超の損害賠償を命じる判決が下されています(ファミリーイナダ社ホームページ)。

地裁判決においてもライセンス料相当額を損害額に含めるなど、従来よりも広範囲で特許侵害による損害額を認める内容となっています。

音楽教室の著作権使用料、生徒の演奏は対象外(最高裁)
音楽教室のレッスンでの楽曲演奏に関して、日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権使用料を徴収できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は、「生徒の演奏からは徴収できない」とする初判断を示しました。

その上で、教師と生徒両方の演奏から使用料を徴収できると主張したJASRAC側の上告を棄却。

教師の演奏からのみ徴収できるとした2審・知財高裁判決が確定しました。

楽曲を利用する「主体」が、実際に演奏する教師や生徒か、運営する教室側かという点が争われました。

最高裁の判決は、生徒の演奏について、「教師から指導を受けて技術向上を図ることが目的で、課題曲を演奏するのはその手段に過ぎない」と指摘。

生徒側が支払う受講料は指導を受ける対価であり、曲を演奏すること自体の対価ではないとして、音楽教室側が「著作物の利用主体だということはできない」と結論づけました。

音楽教室での著作権について司法判断が確定するのは初めてで、全国の音楽教室に影響を及ぼすとみられます。

JASRACと音楽教室側は最高裁判決後、徴収対象と確定した教師分の著作権使用料について金額などの協議を始める考えを示しています。

特許印紙による予納期限、令和5年3月31日まで(特許庁)
特許庁は、特許印紙により特許料等をあらかじめ納付できる期限を令和5年3月31日までとすると公表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

行政手続のデジタル化が進む中、特許料等の予納についても、特許印紙ではなく現金(銀行振込等)で納付する形に法改正がなされたことに伴い、経過措置として特許印紙による予納期間が設けられていました。

なお、現金(銀行振込等)による予納は、来年4月以降も可能です。

<編集後記>
音楽教室の著作権使用料をめぐる最高裁判決については、カラオケ法理と呼ばれる従来の考え方が生徒の演奏に対して適用されなかったことが、弁理士仲間の間で話題となりました。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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