藤川IP特許事務所メールマガジン 2023年10月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                      2023年10月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(21)新規事項を追加する補正

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■オンライン申請とオンライン発送書類の対象拡大(特許庁)
┃ ■AI関連発明の審査体制を強化(特許庁)
┃ ■記事利用料、著しく低い設定は独占禁止法違反も(公取委)
┃ ■模倣品の輸入差止件数、過去3番目の多さ(財務省関税局)
┃ ■「みんなの意匠権 十人十色のつかいかた」発行(特許庁)
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特許庁は、各種手続のデジタル化を推進するため、オンラインで行うことが出来る申請書類と発送書類の対象を拡大すると発表しました。
発送書類については、希望者は特許証、商標登録証、年金領収書、商標更新申請登録通知などをデジタルで受け取れるようになります。

今号では、特許庁における申請手続及び発送手続のデジタル化について紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(21)新規事項を追加する補正

【質問】
特許出願を終えた後に出願済の内容に対して新しい技術的な事項を追加することはできないということですが、どのようなことが禁止されるのでしょうか?

【回答】
「新規事項を追加する補正は拒絶理由、無効理由になります」とよく言われます。どのようなものが「新規事項を追加する補正」とされるのか説明します。

<特許出願後、出願内容を補充・訂正可能>
発明は概念的なものです。このため、特許出願の際に特許請求する発明を文章(必要な場合には図面も添付)で説明することは容易でありません。

そこで、特許出願の際に発明を説明するために提出していた文章、図面の内容を特許出願後に一切訂正できないことにすると新規な発明を他者に先駆けて公開※してくれた特許出願人、発明者の保護に欠けることになります。※特許出願の内容は出願後18カ月後に出願公開公報やJ-Plat Patで社会に公表されます。

そこで、特許出願の際に発明を説明するために提出していた文章、図面の内容を、特許出願後に、補充・訂正する補正が特許出願人に認められています。

<補正後の内容で出願していたことになる>
補正が行われた場合、その補正の効果はいつから発揮されるのか?が問題になります。

補正が行われた時点からのみ補正の効果が発揮されることになると、例えば、特許出願の審査で、補正が行われるたびに特許性判断の時期を補正が行われた時点に変更しなければなりません。これは非常に煩雑です。

そこで、特許法では、補正の効果は特許出願の時点に遡及する、すなわち、特許出願の時点から補正後の内容で特許出願が行われていたとして取り扱っています。

<新規事項を追加する補正の禁止>
上述したように補正は出願時に遡って効力を発揮します。これを補正の遡及効といいます。

一方、同一の発明について複数の特許出願が競合した場合、一日でも先に特許出願を行っていた者でなければ特許取得は認められません(先願主義 特許法第39条)。

このため、出願当初の明細書や図面(以下「当初明細書等」といいます)に記載した事項の範囲を超える内容を含む補正が特許出願後に行われ、当初明細書等に記載されていなかった技術事項が追加された補正後の発明が、補正の遡及効によって、特許出願の時点から明細書に記載されていたとして取り扱うと先願主義の原則に反することになります。

そこで、特許出願人のために補正を許容する一方、先願主義の原則を実質的に確保し、第三者との利害の調整を図る目的で、明細書等の補正については、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならない、すなわち、新規事項を追加する補正を行ってはならないとされています(特許法第17条の2第3項)。

<新規事項を追加する補正は拒絶、無効理由>
補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かにより、その補正が新規事項を追加する補正であるか否かが判断されます。

「当初明細書等に記載した事項」とは、当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項です。補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである場合、その補正は、新規事項を追加する補正でなく、他方、補正が新たな技術的事項を導入するものである場合、その補正は、新規事項を追加する補正であって拒絶理由を受けることになります。

審査の過程で審査官が気づかずに特許成立してしまった場合には特許無効の理由になります。

<どのような補正が新規事項追加になるか>
特許審査基準に記載されている事例をいくつか紹介します。

A 当初明細書等に明示的に記載された事項にする補正:〇
補正された事項が「当初明細書等に明示的に記載された事項」である場合には、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく許容されます。

B 当初明細書等の記載から自明な事項にする補正:〇
補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」である場合には、当初明細書等に明示的な記載がなくても、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく許容されます。

補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でなければなりません。

C 数値限定を追加又は変更する補正
(ア)その数値限定が新たな技術的事項を導入するものではない場合には許容されます。

例えば、明細書(発明の詳細な説明)中に「望ましくは24~25℃」との数値限定が明示的に記載されている場合、その数値限定を請求項記載の発明(=特許請求する発明)に追加する補正は許容されます。

24℃と25℃の実施例が記載されている場合は、そのことをもって直ちに「24~25℃」の数値限定を追加する補正が許されることになりません。

(イ)請求項(=特許請求する発明)に記載された数値範囲の上限、下限等の境界値を変更して新たな数値範囲とする補正は、以下の(i)及び(ii)の両方を満たす場合、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されます。
 (i) 新たな数値範囲の境界値が当初明細書等に記載されている
 (ii) 新たな数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれている

D 発明の効果を追加する補正
一般に、発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものであって許容されません。

しかし、当初明細書等に発明の構造、作用又は機能が明示的に記載されており、この記載から発明の効果が自明な事項である場合は、その発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく許容されます。

<むすび>
特許出願を行った後、特許出願で提出した文章・図面に記載していなかった技術的事項を追加する補正を行うと「新規事項追加の補正である」ということで拒絶理由になり、また、特許権成立後に新規事項追加の補正が審査で見逃されていたことがわかると特許無効理由になります。

そこで、特許出願の際の発明を説明する文章・図面は慎重に準備する必要があります。詳しくは専門家である弁理士にご相談ください。

<次号の予定>
特許庁の審査で「進歩性が欠如している」という拒絶理由を受けた際の対応について説明します。

■ニューストピックス■

●オンライン申請とオンライン発送書類の対象拡大(特許庁)
特許庁は、各種手続のデジタル化を推進するため、オンラインで行うことが出来る申請書類と発送書類の対象を拡大すると発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<オンライン申請>
現在、オンライン申請ができない全ての申請手続について、原則、オンライン申請を可能とする新たな機能がインターネット出願ソフトに追加されます。この新たな申請を「電子特殊申請」と呼び、電子特殊申請を可能とする機能を「特殊申請機能」と呼びます。電子特殊申請は、特殊申請機能を用いて、送付票と呼ばれる書誌情報を作成し、その送付票に申請書類や添付書類をPDFの形式で添付することで、オンライン申請が可能となります。

オンライン申請が可能となる書類例としては、委任状、譲渡証書、優先権証明書などの出願関係、権利の譲渡など登録関係、その他、無効審判、異議申立などが含まれています。

<オンライン発送書類>
現在、インターネット出願ソフトを用いたオンライン発送の対象外となっている書類のうち、申請人からの要望の高い以下の7書類が、新たにインターネット出願ソフトを用いたオンライン発送の対象に追加されます。

1. 特許(登録)証 [四法]
2. 年金領収書 [四法]
3. 自動納付関係通知
4. 商標更新申請登録通知
5. 移転登録済通知 [四法]
6. 識別番号通知
7. 包括委任状番号通知

<今後のスケジュール>
オンライン申請書類については2024年1月、オンライン発送書類については2024年3月にインターネット出願ソフトに追加される機能がリリースされる予定です。ただし、実際のサービス開始は、関係法令の施行日となります。

●AI関連発明の審査体制を強化(特許庁)
特許庁は、AI関連発明の特許審査の体制を強化すると発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

文書や画像を自動作成する生成AIの出現によって、今後、これまで以上に幅広い分野で創作過程にAIが活用されることが見込まれます。

そのため、特許庁では、これまでAI技術の活用が見られなかった分野も含め、AI関連発明の審査をサポートできるような審査体制を整備する必要があると判断、10月1日付けで専門的な知見を持つAI担当官を13人から約3倍の38人に増員しました。

AI関連発明は、これまで医療用の画像診断などの出願が多かったのですが、生成AIの出現により、自動運転や製薬などの技術分野でもAI関連の出願が増えてきました。特許庁では、AI審査の体制強化により、AI関連発明の効率的な審査が推進できるとしています。

●記事利用料、著しく低い設定は独占禁止法違反も(公取委)
公正取引委員会は、新聞社やテレビ局などのメディアとニュースサイトを運営する事業者との取引を調査し、ニュース記事の使用料を著しく低い単価に設定した場合は、独占禁止法違反にあたるおそれがあると指摘しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

調査報告によりますと、2021年度に「Yahoo!」や「LINE」などを運営する6社が報道機関側に支払った記事利用料は、閲覧回数1,000回当たり平均124円で、最も高い事業者が251円、最も低い事業者が49円と約5倍の差があることが分かりました。

公取委は、多くのメディアと記事のやり取りがある「Yahoo!」については、不当な要求をしても受け入れざるを得ない場合があることから、「メディアに対して優越的地位にある」との見解を示しました。そのうえで、一方的に著しく低い記事の使用料を設定した場合、独占禁止法違反にあたるおそれがあると指摘しました。

また、使用料の水準の根拠となるデータについては、「可能な限り開示することが望ましい」と指摘しました。

●模倣品の輸入止め件数、過去3番目の多さ(財務省関税局)
財務省関税局は、全国の税関で知的財産権を侵害する模倣品などの輸入を差し止めた件数が、2023年上半期は前年同期比23.7%増の1万5,536件だったと発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

財務省によりますと、差止件数は3年ぶりに1万5千件を超え、過去3番目の水準となりました。個人使用の目的で輸入した場合でも新たに取り締りの対象となったことが要因とみられます。今回は加熱式たばこのカートリッジなどの模倣品が急増しました。

品目別では、衣類が最も多い28.1%を占め、次いでバッグ類が23.9%、スマートフォンのケースなど、携帯電話とその付属品が14.6%などとなっています。

●「みんなの意匠権 十人十色のつかいかた」発行(特許庁)
特許庁は、意匠制度の活用方法が4コマ漫画で分かるガイドブック「みんなの意匠権 十人十色のつかいかた」を発行しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

本ガイドは、初めて意匠制度に触れる方や、意匠制度をより効果的に活用されたい方、他の産業財産権制度ほど意匠制度になじみがない方に向け、意匠制度の基本やメリット、ビジネスに合わせた活用方法、出願手続の基本等を1冊にまとめたものです。

特に、10人の仮想人物による意匠制度活用例を4コマ漫画で紹介するパート2は、意匠制度になじみのない方にとっても親しみやすい内容となっています。

 <編集後記>
【今月の一冊】『デジタル時代の知財経営戦略(別冊日経サイエンス257)』オープン&クローズ戦略、IPランドスケープなど最新の知財戦略が事例を交えて紹介されています。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内

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