藤川IP特許事務所メールマガジン 2023年8月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2023年8月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(19)特許権侵害を発見したときの対応

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進の
┃  ためのマナーブックを公表(特許庁・経済産業省)
┃ ■英国がTPPに正式加入
┃ ■腕時計「G-SHOCK」が立体商標に(カシオ計算機)
┃ ■GX技術に関する世界の特許出願動向を調査(特許庁)
┃ ■生成AIと著作権の考え方を表明(JASRAC)
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特許庁と経済産業省は、「事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進のためのマナーブック」を公表しました。
連携先との良好なパートナーシップを構築するため、事業会社・スタートアップの双方が意識すべきポイントを「マナー」として紹介しています。オープンイノベーションを成功させるためのパートナーシップを構築する際の参考になるかもしれません。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(19)特許権侵害を発見したときの対応
【質 問】
当社の特許権を侵害しているのではないかと思われる他社の製品を発見しました。
当社の特許品の競合品になっていますので販売をやめさせたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?

【回 答】
特許権侵害品が特許発明品と競合することで特許発明品の売り上げが落ちる等の事態になることがありますので早急な対応が必要です。ただし、最終的には他社を被告として訴訟に臨むこともあり得ますから慎重な対応が必要になります。

<自社の特許権を確認する>
そもそも特許権が存在していなければ特許権に基づく権利を行使することはできません。特許権の効力(特許発明を独占排他的に実施(例えば、製造、販売)することができ、特許権侵害行為に対して差止請求(特許法第100条)、損害賠償請求(民法第709条)することができる)は、特許権が成立してから発生します。

特許権侵害していると思われる他社の製品(以下「侵害被疑品」といいます)に関しては、特許権が成立して以降の第三者による製造・販売行為だけが特許権侵害ということになります。

ところで、「当社のこの製品に採用されている発明に特許を取得していたはずだが・・・」と認識されていても、特許権を維持するために特許庁へ毎年納付しておく必要がある特許料(特許維持年金ということがあります)の納付を中止していたことで、特許出願の日から原則として20年を越えない期間存続し続けるはずの特許権が既に消滅していたということがあり得ます。

そこで、そもそも、自社の特許権は存続しているのかという点を確認する必要があります。

<侵害被疑品に関する詳細な情報収集>
侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属する場合に初めて特許権に基づく権利行使が可能になります。侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属するか否かは非常に微妙な問題で、専門家である弁理士等に相談し、慎重な判断を受ける必要があります。

侵害被疑品を購入してきて分解することで特許発明が採用されていることを簡単に把握できるものであるならば、市場で販売されている侵害被疑品を購入して弁理士のもとに持参し、そこで分解して説明し、判断を受けることが可能でしょうが、そうでない場合には、非常に難しくなります。

侵害被疑品を販売している会社が侵害被疑品を宣伝・広告するために発行している広告物・パンフレット、WEBサイトでの製品紹介、侵害被疑品の取扱説明書、侵害被疑品を販売している会社が展示会などにおいて行った製品説明、等々、侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に属するか否かを判断する上で必要と思われる情報を可能な限りたくさんの集めることが望ましいです。

また、侵害被疑品が特許権侵害品に相当すると判断して販売行為の停止を求める警告書を配達証明郵便などで相手方に届けることにする場合には、将来、特許権侵害行為差止請求訴訟、特許権侵害行為損害賠償請求訴訟に臨むことが考えられます。

そこで、侵害被疑品が販売開始された時期、侵害被疑品が販売されている場所、侵害被疑品の販売態様、侵害被疑品の販売価格、侵害被疑品のおおよその販売数予測、等々の情報も可能であれば収集することが望ましいです。

<侵害被疑品と特許発明との詳細な対比>

侵害被疑品を販売している他社に対して「特許権侵害行為になりますので販売を中止してください。」というような内容の警告書などを配達証明郵便などで届ける場合、これを受け取った他社は大きな衝撃を受けるのが一般的です。

特許権侵害は差止請求の対象になりますので、販売行為を中止する必要が生じ、場合によっては、製造済の製品の廃棄、製造に供した設備の除去まで請求されることがあり得ます(特許法第100条2項)。

また、特許権侵害品に当たると認められた侵害被疑品の販売によって特許権者が損害を受けていた場合にはその損害を賠償する必要が生じます(民法第709条)。上述の警告書をいきなり受け取った他社は大きな衝撃を受けることになりますから、特許権者の誤解・誤認で、明らかに特許権侵害にならない場合、警告書の文面・内容によっては、警告書を受け取った他社との関係が悪化することすら起こり得ます。

そこで、侵害被疑品が、特許発明の技術的範囲に入り、特許権侵害品に相当するものとなるのであるかどうかについては慎重な上にも、慎重を期して検討することが望ましいです。

特許権侵害行為差止請求訴訟に臨む場合、裁判所で、侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に入り、特許権侵害品に相当するものであることを、侵害被疑品と特許発明の構成とを詳細に対比して立証しなければなりません。

上述した警告書を送付する場合でも、侵害被疑品と特許発明の構成とを詳細に対比して特許権侵害品に相当するものであることを詳細に説明することが望ましいです。

侵害被疑品と特許発明との対比が不十分な状態で「特許権侵害行為になりますので販売を中止してください。」等の強い主張で臨み、「当社製品は御社の特許発明の構成要件の全てを充足するものではないので特許権侵害に当たらず、お申し越しの要望にはお応えしかねます。」というような回答を受けた場合には、特許権侵害行為差止請求訴訟に出て裁判所で十分な主張・立証ができるのか?ということになり、前記のような回答を受け取っただけで終わりにしてしまうことすらあります。

特許発明の構成と詳細な対比を行うことができる程度に侵害被疑品の構造・構成を把握することができない場合、例えば、「警告書」という表題ではなく「問い合わせ」というような形式にし、侵害被疑品の構成を問い合わせ、他社が「特許権侵害でない」と判断するときにその理由を説明していただくようにすることもあります。

また、侵害被疑品を販売している会社と日ごろの付き合いがあり、話し合いができるならば、警告書のような書面で対応するのでなく、話し合うことで解決できることもあります。

<所有している特許の有効性の確認>
侵害被疑品が特許発明の技術的範囲に入り、特許侵害品に相当すると判断することができ、送付した警告書への回答次第では特許権侵害差止請求訴訟に臨むことを考えるときには、権利行使の根拠になる特許権の有効性を確認することが望ましいです。

訴えを受けた会社(被告)が、訴訟において無効の抗弁(特許権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許庁での特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者は相手方に対しその権利を行使することができない(特許法第104条の3)を申し立て、これが裁判所で認められてしまうことがあるからです。

特許権は特許庁の審査を経て成立していますから特許を無効にする理由(先行技術文献等)が存在することは多くありませんが、特許庁が把握できなかった業界内での情報(業界紙・誌など)を根拠にして特許が無効にされることがあります。

このため、出訴まで考慮されるのであれば、所有されている特許権の有効性を念のためにご確認されることをお勧めします。

<次号の予定>
自社の特許出願の直前に行われていた他社の特許出願が拒絶理由に引用されることがあります。それぞれの特許出願で特許請求されている発明は異なっているので「同一の発明については一日でも先に特許出願を行っていた者に特許が与えられる」という先願の規定(特許法第39条)が適用される場合ではないように思われるのに、なぜこのようになってしまうのか。

次回は、このようなご質問にお答えします。

■ニューストピックス■
●「オープンイノベーション促進のためのマナーブック」を公開(特許庁・経済産業省
特許庁と経済産業省は、「オープンイノベーション促進のためのマナーブック」を公開しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

事業会社とスタートアップのオープンイノベーション促進のため、連携先との良好なパートナーシップを構築するうえで、事業会社・スタートアップの双方が意識すべきポイントを4箇条のマナーとしてまとめています。

具体的には共通の目的のすりあわせや意思決定のスピードの必要性などを取り上げています。双方の狙いや意向の共有を促すとともに、リスク回避にウェートを置きすぎないようにすることも重要としています。

また、マナーブックとともに、両者間で交わす契約交渉に役立つモデル契約書(OIモデル契約書)の改訂版も公開しています。秘密保持・POC(技術検証)・共同研究開発・ライセンスなどの想定シーンに応じたモデル契約書を掲載しています。

特許庁では、事業会社とスタートアップが実現したい理念や共同したい目的を共有した上で、契約交渉の際は「OIモデル契約書」を活用して、より円滑、効果的にオープンイノベーションを進めてほしいとしています。

●英国がTPPに正式加入
日本や豪州など環太平洋経済連携協定(TPP)の参加国は、閣僚級の「TPP委員会」を開き、英国の加入を正式に承認しました。2018年のTPP発足後、新たな国が加わるのは初めてで、経済圏は欧州にも広がることになります。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

英国はEU(ヨーロッパ連合)を離脱した後、2021年に加入を申請し、各国と交渉を続けてきました。今後、国内手続きを経た上で英国で協定が発効すれば、TPPは12か国体制となり、太平洋を中心とした経済圏が欧州にも広がります。世界全体に占める国内総生産(GDP)の合計の割合は12%から15%へと拡大します。

TPP協定は、関税をかける品目数を段階的に100%近くまで撤廃を進めるとともに、知的財産、電子商取引など幅広い分野で高い水準のルールを定めています。新規加入するためには、これらすべてを受け入れることが前提となります。

現在、TPPには中国や台湾、ウクライナなども加盟申請しており、今後、交渉開始の是非が焦点となっています。

●腕時計「G-SHOCK」が立体商標に(カシオ計算機)
カシオ計算機は、腕時計「G-SHOCK」(ジー・ショック)の初代モデルの形状が、立体商標として登録されたと発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<商標登録第6711392号>
「G-SHOCK」という文字列は商標登録済みですが、今回、「形状」が立体商標として登録となりました。時計の本体部分の八角形の枠やバンドなどの独特のデザインを見れば、ロゴや文字がない形状だけでも消費者がブランドを認識できると判断されました。

カシオ計算機によると、初号機は1983年に発売され、シリーズの累計出荷数は140カ国以上で1億4千万個を超えています。初号機は「ベゼル」と呼ばれる文字板周辺の部品が八角形で、バンドの表面の連続した丸いくぼみが特徴。現在もこうした特徴は一部のモデルに引き継がれています。

同社では、発売から40年間という長きにわたり、機能や構造の進化を図りつつも、同じ形状を保ち続けてきた結果、ユーザーが時計のフォルムを見ただけで「G-SHOCK」と認知できるようになったことから、その目に見えない価値を可視化したと説明しています。

●GX技術に関する世界の特許出願動向(特許庁)
特許庁は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)技術に関する各国・地域の特許出願動向を概括するため、特許庁が作成したグリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)を用いた網羅的な調査を初めて実施しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

GXとは、Green Transformation(グリーン・トランスフォーメーション)の略称で、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心へと転換し、持続可能な成長を目指すことを意味しています。グリーン技術を用い、環境問題を解決しながら経済社会システムを変革(トランスフォーメーション)する取り組みといえます。

GXの主要分野としては、「建築物の省エネ」「二次電池」「電動モビリティ」「太陽光発電」「燃料電池」「熱の電化」「風力発電」「スマートグリッド」「水素技術」などが挙げられます。本調査は主に、「発明件数」と「国際展開発明件数」の観点から、GX技術に関する分析を行っています。調査結果によると、GX技術全体で見た場合、国際的な発明の数において日本が最大であることが明らかになりました。

「発明件数」をみると、中国籍出願人による件数が急増しており、2013年には、それまでトップであった日本国籍出願人による件数を超え最多となっていますが、相対的に価値が高いと考えられる「国際展開発明」の件数においては、日本の存在感が高いことが示されています。

◆二次電池分野、日本が大きくリード
また、技術区分別の調査の結果では、太陽光発電、建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)、および二次電池等の分野において、「国際展開発明件数」および「高被引用国際展開発明件数」から、日本が価値の高い発明の創出において強みを有することが示唆されました。

このうち二次電池に関して、国際展開発明件数の年次推移を見ると、首位の日本国籍が全期間を通して2,000件以上で推移しており、2位以下(1,000件程度)を大きく引き離しています。

国際展開発明件数の上位20者に注目すると、12者を日本国籍が占めています。また、高被引用国際展開発明件数では、首位の日本国籍が959件、2位の米国籍が703件となっており、3位の韓国籍は384件です。この結果から、二次電池は日本が大きくリードしている分野であることが示されました。

●生成AIと著作権の考え方を表明(JASRAC)
日本音楽著作権協会(JASRAC)は、「チャットGPT」に代表される人工知能(AI)などの生成AIと著作権に関する考え方を発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

同協会は「クリエーターが生み出した著作物が生成AIに際限なく利用され、大量に流通すれば、創作活動や文化芸術の発展を阻害する」などと懸念を示しました。著作権法第30条の4は、原則として、AIが文章や画像を学習する際、営利・非営利を問わず著作物を利用できると定めています。

例外として、「著作権者の利益を不当に害する場合」は使用できないとしていますが、これに該当するケースは不明確です。そのため同協会では、「営利目的の生成AI開発でも著作物利用が自由に行われると、クリエーターの努力と才能と労力へのただ乗り(フリーライド)を容認し、フェアではない」と危機感を示しました。

 <編集後記>
【今月の一冊】『ChatGPTの法律 (株)中央経済社(発行)』CHatGPTをうまく使いこなすために知っておきたい法律事情について書かれている本です。

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発行元 藤川IP特許事務所
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〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
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E-mail:fujikawa@fujikawa
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