藤川IP特許事務所メールマガジン 2024年1月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2024年1月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(24)見た目、外観・形態の保護(意匠法による保護)

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■知財一括法の施行日決まる(特許法、商標法、意匠法など)
┃ ■「イノベーションボックス税制」創設(政府・税制改正大綱)
┃ ■特許出願非公開制度、本年5月1日に施行(政府)
┃ ■「日本ネーミング大賞」、初音ミクが最優秀賞
┃ ■意匠の新規性喪失の例外規定の解説動画を公開(特許庁)
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新年明けましておめでとうございます。
昨年は格別のご高配を賜り心より御礼申し上げます。
弊所では、皆様のお力になれますよう、知財サービスのより一層の向上を目指す所存です。
本年もお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(24)見た目、外観・形態の保護(意匠法による保護)

【質問】
当社が新規に開発した発明品は技術的に新規であるだけでなく、その外観・形態がこれまでになかった特有のものになります。
この外観・形態を保護することはできますか?

【回答】
物品の見た目、外観・形態、いわゆるデザインと呼ばれるものですが、これを保護するものとして意匠法による意匠登録があります。
技術的な観点から創作の保護を図る特許と、物品の見た目、外観・形態の保護を図る意匠との関係を説明します。

<創作の保護という観点で特許と共通する意匠>
人間が頭の中で考え出した知的な情報であって、それを活用することによって財産的な価値が生み出される知的財産の中に、特許庁に出願・申請を行い、権利の付与を受けて保護される形式の特許権、実用新案権、意匠権、商標権があります。これらは総称して産業財産権と呼ばれます。

何らかの技術的な課題が存在しているときに、これを解決する技術的な工夫・創作として発明が完成して特許出願により特許権取得を目指し、その発明が具現化された製品を市場に売り出す際に、その製品の見た目、外観・形態に特徴があるということで新製品の見た目、外観・形態を保護すべく意匠登録出願により意匠権取得を目指し、その売り出す新製品につけるネーミングを商標として保護すべく商標登録出願により商標権取得を目指すというのが産業財産権の最も典型的な活用例とされています。

特許権で保護される発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」です。意匠権で保護される意匠は「物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合等であって、視覚を通じて美感を起こさ
せるもの」(意匠法第2条)ですが、意匠は創作を保護するという点で特許と共通していると考えられています。

意匠登録、意匠権付与が創作を保護するものである、というのは、工業上利用することができる意匠の創作をした者が意匠登録を受けることができるとされていて、意匠登録出願の時点での新規性や、従来公知の意匠等に基づいて簡単・容易に創作できたものではないという程度の創作性が意匠登録を受けるために要求されている点からうかがえます(意匠法第3条)。

<特許と意匠とによる複合的な保護>
特定の技術的な課題を解決できる発明を完成させたときに、その発明を製品に具現化すると見た目、外観・形態も従来になかった新規な見た目、外観・形態になる場合、特許出願を行って発明についての保護を求めるだけでなく、意匠登録出願を行ってその新規な見た目、外観・形態についても保護を求めることがあります。

特許庁は、物品の見た目、外観・形態であるデザインを保護する上で中心的な役割を果たす意匠制度の活用方法について具体的な事例に基づいて紹介する「事例から学ぶ意匠制度活用ガイド」を発行しています。

このガイドの冒頭で、「ビジネスにおいて、一つの製品に関して、複数の知的財産権により複合的な保護を図ること(いわゆる『知的財産権ミックス』)で、技術、デザイン、ブランドの模倣に多面的に対抗することができるようになります。」として紹介されているものの一つに株式会社ワコールが所有している特許第4061336号(2007年12月28日登録 発明の名称:運動用衣類)と意匠登録第1324024号(2008年2月8日登録 意匠に係る物品:スポーツシャツ)があります。

特許第4061336号は、2006年12月26日に日本国特許庁に日本語の国際出願で提出されました。翌年2月に日本国特許庁審査官が作成した「特許請求されている発明は新規性、進歩性を有している」という肯定的な国際調査報告を受け、2007年4月24日に日本国特許庁に審査請求しました。

引き続いて、2007年7月27日に意匠登録第1324024号が出願され、同時に、第1324024号の「スポーツシャツ」に外観・形態が似ている「スポーツシャツ」の意匠登録出願が10件行われました。
この10件の意匠出願はいずれも意匠登録第1324024号の関連意匠として意匠登録されています。

上述の11件の意匠登録出願を行った後、前述したように審査請求していた特許第4061336号の出願について2007年11月21日に「早期審査事情説明書」を提出して早期審査を受け、1カ月後の12月18日に「特許査定」となり、特許料を納付して同年12月28日に特許権成立しています。

特許は技術的思想の創作を保護するもので、その保護範囲は、特許請求の範囲に文章で表現されている発明によって確定されます。そこで、ある程度の広がりがある技術的範囲を1件の特許でおさえることが可能になります。

一方、意匠は物品の見た目、外観・形態を保護するもので、見た目、外観・形態が多少でも異なると意匠権の効力が及ばなくなることがあります。

前述の例で運動用衣類(スポーツシャツ)を特許権と意匠権とで複合的に保護するにあたり、特許権は1件で、意匠権は意匠登録第1324024号及びこれに外観・形態が似ている10件の関連意匠、合計11件の意匠登録が行われているのはこのためではないかと思われます。

<特許出願から意匠出願への出願変更>
人間の頭の中で考え出された創作を保護するという点で共通していることから特許出願から意匠登録出願への出願変更が認められています(意匠法第13条)。特許出願を行う際に、特許請求している発明を具現化して市場に提供する新製品の外観・形態が既に決定されている場合、それを正面、背面、左・右側面、平面・底面から見た図や斜視図などを特許出願の図面に含めておくことができます。

この特許出願の審査で最終的に「進歩性欠如、等」の理由で拒絶査定になったときに、特許権取得を断念して特許出願から意匠登録出願へ出願変更し、意匠登録を受けて意匠権で新製品の保護を図るものです。特許では技術的な面からの新規性、進歩性が要求されますが、意匠で要求されるのは見た目、外観・形態における新規性・創作の非容易性であることからこのようなことが可能になります。

<新規な創作をどのように保護するか>
新規な創作を完成させた場合、それを特許で保護するか、意匠で保護するか、特許と意匠の双方で保護を図るか、いろいろな方法が可能です。専門家である弁理士にご相談ください。

<次号の予定>
特許出願は出願手続と別個に審査請求という手続を特許庁に対して行いませんと、その特許出願で特許請求している発明について特許を認めることができるかどうか特許庁審査官が検討・判断する審査が開始されません。審査請求は特許出願後のどの時点で行うことにすればよいでしょうか。審査請求する時期を判断するいくつかの指標について説明します。

■ニューストピックス■
●知財一括法の施行日決まる(特許法、商標法、意匠法など)
令和5年6月14日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(知財一括法)が公布されましたが、その施行期日が決定しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

今回の改正では、デジタル技術の活用により、特に中小企業・スタートアップの事業活動が多様化していることなどに対応するため、

(1)ブランド・デザイン等の保護強化
(2)コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続の整備
(3)国際的な事業展開に関する制度整備

の観点から、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法の改正が行われました。
これらの改正内容のうち、今回施行日が決まったのは以下のとおりです。

【令和6年1月1日施行】
・優先権証明書のオンライン提出許容のための規定整備
・書面手続のデジタル化のための改正
・e-Filingによる商標の国際登録出願の手数料納付方法の見直し
・意匠の新規性喪失の例外規定の適用手続の要件緩和

【令和6年4月1日施行】
・不正競争防止法改正関連の措置事項
・他人の氏名を含む商標に係る登録拒絶要件の見直し
・商標におけるコンセント制度の導入
・中小企業の特許に関する手数料の減免制度の見直し

◆法改正説明会を開催(特許庁)
特許庁は、「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が公布されたことを踏まえ、法改正説明会を全国で順次開催します。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

【愛知県 令和6年2月26日、名古屋市(ウインクあいち)】
説明会では、改正された不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法の改正事項を中心に説明が行われます。

また、2024年の5月に運用開始が決まった「特許出願非公開制度」についても取り上げます。経済安全保障に対する関心が高まる中、制度の概要や留意すべき事項(外国出願が禁止される場合など)を中心に説明が行われる予定です。

●「イノベーションボックス税制」を創設
(政府・与党 2024年度税制改正大綱)
政府・与党は、2024年度税制改正大綱をまとめました。賃金上昇を図るため、所得税と住民税の定額減税や企業の賃上げを後押しする税制の拡充などが盛り込まれました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

知的財産分野では、企業が国内で研究・開発した特許などで得られた所得を対象に、法人税を減税する「イノベーションボックス税制」の創設が盛り込まれました。国内での研究開発を促し、企業の国際競争力を高める狙いがあります。

政府・与党の税制大綱によると、企業が国内で自ら研究開発を行った特許権または人工知能(AI)分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得または国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認めるとしています。

一方、経済産業省などが要望していた知財を組み込んだ製品の売却収入については、優遇税率の対象となりませんでした。製品開発では他社の知財も使われる場合が多く、それぞれの知財の売り上げ貢献度などを算出するのは難しいことなどから見送られました。

●特許出願非公開制度、本年5月1日に施行(政府)
政府は、経済安全保障の強化のため先端技術などの特許出願を非公開に指定できる制度を本年5月1日に施行することを決定しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

経済安全保障推進法(経済安保法)では、軍事転用が可能な技術流出を防ぐため、航空機をレーダーで捉えにくくする技術や、無人飛行機などの25の技術分野を対象に原則公開とされる特許の出願内容を非公開にできる制度を定めています。

本年5月1日から出願される特許を対象に非公開に指定するかの審査が行われる予定で、非公開に伴い損失が生じた場合は、国から補償を受けることができます。
非公開指定を受けた企業は、発明に関する情報を保全する措置を講ずることが求められていて、政府は情報漏えい対策などの対応を盛り込んだ新たな指針をとりまとめました。

指針では、発明した技術に関する情報を共有する人物を必要最小限に限定することや、情報を管理する場所への立ち入りを制限すること、対策の責任者を指名することなどを求めています。

●「初音ミク」が日本ネーミング大賞で最優秀賞
一般社団法人日本ネーミング協会主催の「日本ネーミング大賞 2023」で、歌声合成ソフトの「初音ミク」が最優秀賞を受賞しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

初音ミクは、2007年8月31日に発売された歌声合成ソフトの名称で、同ソフトのキャラクター。「未来からきた初めての音」が名前の由来となっています。発売直後から多くのクリエイターによって音楽やイラスト、動画などが作られ、ネットで拡散されて世界中に広まりました。ネーミング大賞の審査対象となったのは、2022年10月1日から2023年9月30日までの間に、日本国内で販売または提供されている「商品名」「サービス名」「社名」などで、そのネーミングが商標登録されているものです。

今回は509件のノミネートから、クリプトン・フューチャー・メディア(北海道札幌市)の「初音ミク」が大賞に選ばれました。このほか、「レジェンド賞」として、「タイガー魔法瓶」「青春18きっぷ」「地球の歩き方」「ごはんですよ」などが受賞しました。

●意匠の新規性喪失の例外規定の解説動画を公開(特許庁)
特許庁は、意匠の新規性喪失の例外規定適用手続に関する解説動画「意匠犬と学ぼう!出願前にデザイン公開した場合の手続(応用編)」を公開しました。

2匹の「意匠犬」が、意匠法の概要と出願前にデザインを公開した場合の手続について、8分程度の動画で分かりやすく解説しています。

<編集後記>
新年早々、能登半島で大きな地震が発生し、大変驚きました。被災された皆様が一日も早く日常の生活を取り戻されることを祈念します。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内

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