藤川IP特許事務所メールマガジン 2024年5月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                       2024年5月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(28)発明者の補正(手続と留意点)

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■「特許庁ステータスレポート2024」を公表(特許庁)
┃ ■営業秘密の侵害、過去2番目に多い摘発(警察庁)
┃ ■米グーグルに行政処分、広告配信制限の疑い(公取委)
┃ ■中国の「商標ブローカー」に勝訴(美容機器のMTG)
┃ ■「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」を作成(特許庁)
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「特許庁ステータスレポート2024」が公表されました。ステータスレポートは、特許庁が最新の知的財産権 (特許、実用新案、意匠、商標) の出願、審査、訴訟などに関する統計情報を取りまとめた年次報告書です。

今号では、ステータスレポートの中から2023年の特許・意匠・商標の出願状況と審査期間を紹介します。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(28)発明者の補正(手続と留意点)

【質問】
特許出願の際に願書(特許願)に記載して特許庁へ届け出ていた発明者を訂正したいのですが可能ですか?

【回答】
特許出願が特許庁に係属している場合であれば、特許出願の際に願書(特許願)に記載した発明者を補正することが可能です。

<出願が特許庁に係属している場合に限り補正可能>
特許出願の際に願書(特許願)に記載して特許庁へ届け出ていた発明者は、この者が発明を完成させたという事実行為を表明しているものですから特許出願を行った後に補正・訂正を行う必要は生じないということが原則です。

そこで、従来から、特許出願後の発明者の補正は簡単には行うことができないものとされていますが、特許出願が特許庁に係属している場合に限って補正をすることが許されています。(特許庁 方式審査便覧 21.50

なお、特許出願が特許庁に継続している場合に限って発明者の補正が認められるので、特許権が成立した後に発明者を訂正することはできません。

<発明者自体を変更する補正>
発明者自体を変更する補正としては、例えば、発明者 特許一郎 と願書(特許願)に記載していたものを発明者 発明一郎 に補正する発明者の変更や、発明者として一人しか記載していなかった場合に発明者を複数人に補正する発明者の追加、発明者として複数人を記載していた場合に発明者を一人に補正する等の発明者の削除を行う場合が例示されています。

いずれの場合でも、発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

ただし、上述の「手続補正書」に【その他】の欄を設け、発明者を誤記した原因(例えば、特許出願人の会社担当者が、特許出願を、出願代理人である弁理士に依頼した際に、発明者の氏名を間違って伝えた、等)に言及して、変更(追加、削除)を行う理由を具体的かつ十分に記載する必要があります。

また、発明者相互の宣誓書(変更前の願書の発明者の欄に記載のある者と補正後の同欄に記載される者の全員分の真の発明者である旨又はない旨の宣誓)を上述した「手続補正書」に対する「手続補足書」に添付して書面で特許庁へ提出する必要があります。

この発明者相互の宣誓書は、変更前の願書(特許願)の発明者の欄に記載されている者(××××)と、補正後の発明者の欄に記載される者(△△△△と□□□□)の全員分の住所又は居所と氏名とが記載されていて、発明者の相互関係(△△△△と□□□□とが真の発明者であり、××××は発明者ではない旨)が宣誓されているものになります。

<発明者の表示の誤記を訂正する補正>
例えば、発明者 特許二郎 と願書(特許願)に記載すべきところを、発明者 特許二朗 と誤記していた場合にこの誤記を訂正する補正です。

発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

この際、「手続補正書」に【その他】の欄を設け、発明者を誤記した原因(例えば、特許出願の代理人である弁理士が、願書(特許願)に発明者の氏名を記入した際、漢字が誤変換されていることに気づかず、そのまま特許出願を行ってしまった、等)に言及して、誤記の理由を具体的かつ十分に記載する必要があります。

<発明者の記載順序を変更する補正>
例えば、複数人の発明者を特許一郎、発明一郎の順で願書(特許願)に記載すべきところを、一番目に発明一郎、二番目に特許一郎と願書(特許願)に記載していた場合に、発明者の記載順序を訂正する補正です。

発明者の補正を特許庁に届け出る「手続補正書」を特許庁に提出することで補正を行うことができます。

この際、「手続補正書」には、補正後の発明者の欄に正しい順番で発明者を記載し、【その他】の欄を設けて「発明者の順序の変更(発明者の記載内容に変更なし)。」と記載します。

<特許出願前に願書(特許願)の記載を確認する>
以上に説明したように、特許出願後であっても、特許出願が特許庁に係属している限り発明者の補正を行うことが可能です。

しかし、特許出願は、特許出願で特許請求する発明について特許を受ける権利(特許法第33条)を所有している者のみが行うことのできるものです。特許出願を行った特許出願人が特許出願に係る発明について特許を受ける権利を所有していないときには特許出願を拒絶する理由になり、特許権成立後にこれが判明した場合には特許無効の理由になります。

一方、特許を受ける権利は発明をすることにより生じるもので、原則としては、発明完成時に、当該発明についての特許を受ける権利を、発明者が原始的に取得することになります。

このため、願書(特許願)に記載している発明者の表示に間違いがあって、特許出願後に補正を行う必要が生じる場合、「特許出願人は、特許出願前に、発明者から、適式に特許を受ける権利の譲渡を受けていたのか?」疑義が生じることがあり得ます。そこで、特許出願を行う代理人弁理士と十分な連絡を取り合って、特許出願前に願書(特許願)の記載を十分に確認しておくことが望ましいといえます。

■ニューストピックス■
●「特許庁ステータスレポート2024」を公表(特許庁)
特許庁は、最新の統計情報や知財の動向などを記載した「特許庁ステータスレポート2024」を公表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

ステータスレポートは、特許庁が知的財産権 (特許、実用新案、意匠、商標) の出願、審査、訴訟などに関する統計情報などを取りまとめた年次報告書です。今回は、この中から特許・意匠・商標の出願状況と審査期間を紹介します。

<特許出願件数が3.7%の大幅増>
2023年の特許出願件数は300,133件、意匠出願件数は31,747件、商標出願件数は164,061件でした。
特許庁が受け付ける特許出願件数が30万件を越えるのは2019年以来4年ぶりになります。2019年の特許出願件数は307,969件で、以降、2021年の289,200件まで漸減し、2022年に289,530件と前年から微増していました。

2020年、2021年はコロナ禍という事情がありました。30万件台への回復は、コロナ禍の前にようやく戻ったといえます。2005年に413,006件であった特許出願件数はその後多少の増減を繰り返しながら一貫して減少してきました。2023年の特許出願件数300,133件は前年比3.7%増で、対前年比で大幅な増加になります。

また、中小企業の特許出願件数をみると、レポートには2022年の実績までしか記載されていませんが、2022年の中小企業の特許出願件数は、39,648件で、前年の37,875件より1,773件増加しており、こうした傾向がどのようになるのか注目されます。

<一次審査通知 (First Action) までの期間 (FA期間) と権利化までの期間>
特許の2023年のFA期間は平均10.0か月。権利化までの期間は平均14.7月。
商標の2023年のFA期間は平均 5.4か月。権利化までの期間は平均6.9か月。
意匠の2023年のFA期間は平均 6.0か月。権利化までの期間は平均7.0か月。

●営業秘密の侵害、過去2番目に多い摘発(警察庁)
警察庁は、「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等」を発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

それによると、2023年に全国の警察が受理した企業情報の持ち出しなど営業秘密侵害に関する相談件数は前年比19件増の78件で、統計を取り始めた13年以降で最多となりました。また、営業秘密侵害事件の摘発件数は26件で、最多だった22年に次いで2番目に多い摘発となりました。

警察庁は、転職など人材の流動化が進んでいることや営業秘密に対する企業側の意識の高まりなどから、摘発・相談件数が高水準になっているとみています。

<改正不正競争防止法による営業秘密保護の強化>
本年4月に施行された改正不正競争防止法では、営業秘密の保護が強化されました。
営業秘密を使用された被害企業が損害賠償請求を行う場合、被害側にとって、侵害者(被告)が営業秘密を実際に使用していることを立証するのは非常に困難です。

そこで、改正不正競争防止法では、営業秘密を使用された被害側が営業秘密を不正に取得されたこと、そして、その秘密を使って生産できる製品を相手企業が作っているという2点を立証できれば、損害賠償を請求できるようになりました。

●米グーグルに行政処分、広告配信制限の疑い(公取委)
公正取引委員会は、米グーグルが「検索連動型」と呼ばれるインターネット広告の配信事業で、競合するLINEヤフーの事業を不当に制限した疑いがあるとして、独占禁止法に基づき行政処分を科したと発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

「検索連動型」のインターネット広告は、検索エンジンに打ち込まれたキーワードに関連した広告が、サイトなどに自動的に表示されるサービスで、米グーグルが日本国内でも圧倒的なシェアを持っています。LINEヤフーは2010年以降、米グーグルから技術提供を受ける形で、サービスを展開しています。

公取委によりますと、技術面や国内シェアで優越的な立場にある米グーグルは、2015年9月2日から2022年10月31日までの約7年間、LINEヤフー側への技術提供を制限。この結果、LINEヤフー側はポータルサイトへ検索連動型広告を配信することが困難になったとしています。公取委は、こうした行為は独禁法上問題となる恐れがあるとして、2022年から審査を行ってきました。

米グーグルは公取委に対して事実関係を認めたうえで、改善計画である「確約計画」を提出。公取委がこの計画を認定したことにより、重い行政処分である排除措置命令や課徴金納付命令などは免除されました。

●中国の「商標ブローカー」に勝訴(美容機器のMTG)
美容・健康関連機器などの販売を展開するMTGが、中国の商標ブローカーを相手取り不正競争防止法違反で訴えていた裁判において、中国現地の裁判所が不競法違反などを認める判決を下したと発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

MTGによると、判決では、中国の「商標ブローカー」と呼ばれる企業集団が、他人の商標を営利目的で多数出願し、高額での買い取りを要求する「悪意の商標出願」について、不競法違反を認め、企業集団が保有していた「ReFa」などの商標の取り消しを命じるとともに、65万元(約1,385万円)の賠償金の支払いを命じました。商標を先取り登録する行為により、MTGは中国で「ReFa」のブランドを自由に使えないなどの事業上の阻害を受けていたことから、MTGは商標権の無効審判手続などを起こして商標権の取り戻しを進めていました。

●「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」を作成(特許庁)
特許庁はこのほど、商標・商標権の効果や活用事例、商標権取得までの流れや出願手続きなどをまとめた「事例から学ぶ 商標活用ガイド~ビジネスやるなら、商標だ!」を作成、公表しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)

2019年に作成したガイドを5年ぶりに刷新したもので、ビジネスにおける活用方法や権利化に関するメリット、商標を取っていなかったために起きた失敗なども実際の事例を通じて分かりやすく紹介しています。ガイドでは、商標・商標権の活用事例のほか、失敗事例なども紹介。

失敗事例では、他社による先取りや商標権の失効、商標権の内容確認の未実施など、国内・海外で実際に起きた失敗事例を取り上げるとともに、トラブル回避に向けたアドバイスも掲載しています。

<編集後記>
【今月の一冊】「留目弁理士奮闘記!『男前マスク』と『王女のマスク』(黒川正弘 三和書籍)」下町マスク工場の再建に奮闘する弁理士を描いた小説。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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