藤川IP特許事務所メールマガジン 2024年4月号
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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
2024年4月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
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┃ ☆知財講座☆
┃(27)特許出願の種となる発明の発掘
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┃ ☆ニューストピックス☆
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┃ ■スタートアップへ「プッシュ型支援」(特許庁)
┃ ■蚊防除スプレーの特許侵害で提訴(大日本除虫菊)
┃ ■輸入差止の模倣品、過去2番目の多さ(財務省関税局)
┃ ■AI関連技術に関する特許審査事例を追加(特許庁)
┃ ■特許庁が「くら寿司」とのコラボ動画を公開
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特許庁は2024年4月より、特許を出願したスタートアップ企業に対して特許庁側から積極的に連絡を取り、支援策の活用などをサポートする「プッシュ型支援」(PASS)を開始します。
特許審査官によるサポートで事業に即した権利の早期取得を支援する仕組みです。
そこで今号では、「スタートアップに対するプッシュ型支援」の概要を紹介します。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(27)特許出願の種となる発明の発掘
【質問】
毎日のように製造を行い、毎日のように工夫を重ねています。このような毎日の仕事、作業の中から発明を発掘することはできるのでしょうか?
【回答】
なんらかの技術的な課題・問題点の存在を認識していて、それを解決する工夫を行った場合、何を発明したのかを認識、意識することは簡単です。しかし、毎日の工夫の積み重ねの中で、気づかないうちに発明を完成させていることがあります。そのようなものを埋もれたままにしておくのと、発明として発掘し、会社の知的財産として有効に活用していけるようになるのとでは、将来、大きな違いになります。発明発掘の一般的な手法を説明します。
<課題が明らかである場合>
解決手段の提案
毎日の製造工程・開発工程において、何らかの技術的な問題点・課題を認識できている場合には、それを解決するための手段、工夫をたくさん提案してもらいます。
提案してもらう際には、実現可能性(実現できそうか否か)、経済性(開発にどのくらいの費用がかかりそうか)、開発するのにどのくらいの期間を要しそうであるか、同業他社がすでに採用していそうな工夫であるかどうか、特許になりそうかどうか、等々の問題は一切気にせず、とにかくたくさん提案してもらいます。
解決手段の評価
提案を受けた多くの解決手段の一つひとつについて、その有効性などを評価します。
この際、評価が低くて次の工程に進まなかった提案についても、取り上げていた問題点・課題に対する解決策の一つとして提案され、評価を受けたことを記録に残しておくことが望ましいです。将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。
次の段階の問題点・課題の把握
より高い評価を受けた解決手段を採用する場合、次にどのような問題点・課題が生じることになるかを検討します。
技術開発は、いわば、無限ループです。技術は、螺旋状に積み重ねられて次第に発展していくものです。何らかの技術的な問題点・課題を解決・克服するために何らかの解決手段を採用すると、その解決手段を採用したことに起因して新たに解決すべき問題点・課題が浮上してくるのが一般的です。
新たな解決手段の提案
上述した新たに浮上してきた問題点・課題を解決する解決手段を、上述したように、実現可能性、経済性、等々を問題にせずにたくさん提案してもらいます。
新たに提案された解決手段の評価
新たに提案を受けた多くの解決手段の一つひとつについて、その有効性などを評価します。
このように、解決する必要がある何らかの技術的な問題点・課題が最初から認識できている場合には、多数の解決手段の提案⇒提案された解決手段の評価⇒高い評価を受けた解決手段を採用した場合に生じる新たな問題点・課題の把握⇒把握された新たな問題点・課題に対する多数の解決手段の提案・・・という工程を繰り返すことで発明を発掘することができます。
このようにして発掘された発明は、当初に認識されていた何らかの技術的な問題点・課題を解決できるという効果を発揮できるものです。
このような発明発掘作業を行う際に、専門家である弁理士に参加してもらうことができますし、発掘した発明を採用して実施したときに他社が所有する特許権を侵害するおそれはないか、発掘した発明を特許出願する意義があるか、等々については、専門家である弁理士に相談できます。
<技術者の暗黙知として既に発明が完成している場合>
埋もれている発明の「見える化」
生産現場・開発現場などにいる技術者などが日々の生産・開発活動などで行っている工夫の中にきらりと光る発明が存在しているが、技術者などは「あたりまえのこと」と考えていて、発明であると認識していないことがあります。
このような場合、発明を「見える化」することが重要です。生産現場・開発現場などにいる技術者から聞き取りを行う、技術者の皆でディスカッションを行ってもらう等により、生産・開発工程にどのような工夫が加えられてきたのか、その経過を「見える化」します。どのような工夫を行うことによっていかなる問題点、課題が解決されたのか、どのような効果が上がるようになったのかが皆に明らかになるようにするものです。
生産・開発工程に様々な工夫がつぎ込まれていることがありますので、皆の記憶を一つ一つ掘り起こし、どのような工夫が採用されたのかを拾い出して、一人ひとりが採用したと考えている工夫についての認識を皆で共有できるようにします。
採用した工夫によって発揮されるようになった効果について、様々な工夫がつぎ込まれている場合、採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果についての認識が技術者同士の間で異なることがあります。採用した工夫とそれによって発揮されるようになった効果との対応関係が皆の共通認識になるように「見える化」します。
この際、採用しようとしたがうまくいかなかった工夫(なぜうまくいかないと判断されたのか)、考えつくだけはしたのだが試してみなかった工夫(試してみなかった理由)なども、「見える化」して社内での共通認識にしておくと、将来、何らかの技術的な問題点・課題が発生したときに解決策を検討する材料になることがあります。
「見える化」した工夫の評価
上述したようにして「見える化」した工夫の中で、発明として特許出願できるもの、会社内の技術的なノウハウとして蓄積する方がよいものを選別します。例えば、同業他社であってもいずれ考えつくことになるであろうと思われる工夫については、特許取得できるものならば、一日でも先に特許出願することが有利になります。
発明として特許出願できる可能性のあるものについては、技術的・経済的価値を高める上で更に改良・改善の余地はないのかを社内で検討したり、弁理士などの専門家に相談して、この工夫は他社が所有している特許権を侵害しているものではないか、特許出願する意義があるか等々や、発明内容を、より普遍化し、効力範囲の広い発明概念にすることについて更なる検討を行うことができます。
製造・開発現場で働いている人たちは毎日のことなので「当たり前のこと」と思っていることの中に発明や、発明の種が埋もれていることが多くあります。そこで、社内に埋もれている発明を「見える化」する際の上述した聞き取りや、ディスカッションなどに新鮮な視点から発明を認識できる弁理士などの専門家に参加してもらうのも有効です。
■ニューストピックス■
●スタートアップへ「プッシュ型支援」(特許庁)
特許庁は2024年4月より、特許を出願したスタートアップ企業に対して特許庁側から積極的に連絡を取り、支援策の活用などをサポートする「プッシュ型支援」(PASS:Push-type AssistanceService for Startups)を開始します。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
従来のスタートアップ向け支援策は、出願人側からの求めに応じて行われていましたが、「プッシュ型支援」では、特許を出願したスタートアップやその代理人に対して、特許庁側から電話やメール等で積極的に連絡を取り、各種支援策を紹介し、それらの活用を促します。
特に支援策の一つである「スタートアップ対応面接活用早期審査」では、特許審査官がきめ細やかなサポートを提供し、事業に即した質の高い権利の早期取得に向けて支援します。
これまでは、スタートアップ対応面接活用早期審査を希望する際、「早期審査に関する事情説明書」の提出が必要でしたが、「PASS」に基づく特許庁からの連絡を受けた出願人は、事情説明書を提出せずとも、利用の希望を特許庁側に電話で伝える等の簡易的な手続により早期審査を受けることができます。これにより、通常より早期の審査や事業戦略に即した権利取得が可能になるとされています。
●蚊防除スプレーの特許侵害でアース製薬を提訴(大日本除虫菊)
「金鳥(KINCHO)」ブランドで知られる「大日本除虫菊」は、スプレーで噴霧する「蚊類防除用エアゾール」の発明に関する特許権(特許第7026270号)に基づき、アース製薬に対し、同種製品の製造・販売の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こしたと発表しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
大日本除虫菊は、蚊は飛んでいる時間よりも壁などに止まっている時間の方が長いという習性を自社の研究開発で発見。「蚊類防除用エアゾール」の噴射力や、噴射容量などを調整することにより、室内空間の露出部に付着させ、蚊に対し、優れた防除効果を持つ「蚊類防除用エアゾール」の発明について特許権を取得。2010年から「蚊がいなくなるスプレーシリーズ」として発売しています。
大日本除虫菊によると、アース製薬の「おすだけノーマットスプレータイプ」などは、「蚊がいなくなるスプレーシリーズ」の基本となる特許を侵害していると訴えています。
●輸入差止の模倣品、過去2番目の多さ(財務省関税局)
財務省は、2023年に全国の税関で偽ブランド品など知的財産侵害物品の輸入を差し止めた件数が前年比17.5%増の3万1666件だったと発表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
3年ぶりに3万件を超え、1987年に統計を取り始めて以降、2番目の多い摘発となりました。22年10月に改正商標法、意匠法、関税法が施行され、海外の事業者から日本に模倣品(商標権または意匠権を侵害するもの)が送付された場合は、個人使用の場合でも、税関で没収の対象となり、摘発範囲が拡大した影響とみられます。
品数は105万6245点(同19.7%増)に上り、財務省は、差し止めた物品が全て正規品だった場合の金額は約171億円に相当すると推計しています。
種類別では衣類が最も多く1万401件と全体の28%を占め、次いで財布やハンドバッグなどのバッグ類、靴類などとなっています。違法なコピー品の中には、ドジャース・大谷選手のユニフォームも多数含まれています。大谷選手の移籍が決定したのは2023年の12月半ばにもかかわらず、年末にはすでに偽造ユニフォームが差し止められています。
輸送形態別では、郵便物による輸入が9割を占めています。財務省は、国境を越えた電子商取引(EC)の発達などを背景に「模倣品輸入の小口化が進んでいる」と分析しています。
●AI関連技術に関する特許審査事例を追加(特許庁)
特許庁は、AI関連技術が様々な技術分野で発展していることに伴い、進歩性、記載要件及び発明該当性についての判断のポイントを示すことを目的として、AI関連技術に関する特許審査事例を作成、公表していますが、このほど、これまで以上に幅広い分野において、創作過程におけるAIの利活用の拡大が見込まれることから、さらに10事例を追加しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
追加された事例の内訳は、進歩性について4件、実施可能要件およびサポート要件について1件、サポート要件について2件、発明該当性について2件、明確性要件について1件。明細書中にどのように記載されていれば、特許要件を満たすかなどについて、具体例を示しています。
また、特許庁は「特許・実用新案審査ハンドブック」を改訂し、AI関連技術に関する新たな特許審査事例(10事例)を附属書に追加しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
●特許庁が「くら寿司」とのコラボ動画を公開
特許庁は、知的財産を楽しく学んでもらうために、YouTubeチャンネル「JPOちゅーぶ」で動画を配信していますが、このほど、回転寿司業界の発明王と言われる「くら寿司株式会社」とコラボ動画(前半・後半)を作成し、公開しました。
▷動画はこちら(別サイトが開きます)
前半の動画では、特許庁の職員が、回転寿司業界の発明王として知られる、くら寿司の店舗に実際に赴き、入店してから食事をして会計するまでの間にどれだけの知財(特許・商標・意匠)が活用されているのかを紹介します。
後半の動画では、特許庁の職員が、くら寿司の広報部長に、くら寿司の知財戦略についてインタビューする内容となっています。
<編集後記>
【今月の一冊】『中小企業のための知財戦略2.0(後藤昌彦 総合法令出版)』「知財戦略2.0」とは、取得した知財を企業経営に直接活かしていく戦略のことを指します。(本文より抜粋)
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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com
<名駅サテライトオフィス>
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