藤川IP特許事務所メールマガジン 2024年11月号
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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
2024年11月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃
┃ ☆知財講座☆
┃ (34)特許出願直後の発明の実施と留意点
┃
┃ ☆ニューストピックス☆
┃
┃ ■「レナウン」の社名が復活(オッジ・インターナショナル)
┃ ■人気ゲーム運営元を特許権侵害で提訴(セガ)
┃ ■電子マネー「PayPay」の決済音、音商標で出願
┃ ■知的財産の取引適正化に向け下請法改正へ(公取委)
┃ ■商標の審査着手状況(審査未着手案件)を公表(特許庁)
┃ ■中小企業等の海外出願の権利化に要する費用を補助(特許庁)
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中小企業等の海外出願の権利化に要する費用を補助する「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」を紹介します。
同事業は外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業等に対し、外国出願に要する費用の1/2を助成するものです。
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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(34)特許出願直後の発明の実施と留意点
【質問】
特許出願の前に特許庁のJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で先行技術文献調査を行ってから特許出願を行いました。
先行技術文献調査では特に問題にすべきと思われる先行特許出願は発見できていません。
そこで、特許出願した発明内容を、直ちに、会社の事業で実施したいのですが大丈夫でしょうか?
【回答】
特許出願前の特許庁J-PlatPatでの先行技術文献調査では調査できていない範囲があります。
そこで、「直ちに実施しても大丈夫」と言えるわけではありません。
今回はこの事情を説明します。
<特許出願公開公報は出願日から18カ月経過しないと発行されない>
特許出願について特許庁から公開される情報・発行される公報には「公開特許公報」(=特許出願公開公報)、公表公報(=外国語で提出された後に、日本国への移行手続及び、日本語への翻訳文提出手続が日本国特許庁に対して行われた国際出願の日本語翻訳文)、特許掲載公報があります。
この中で、日本国特許庁が特許出願を受け付けた後に、一番早く発行される公報は、一般的に、「公開特許公報」(=特許出願公開公報)です。
「公開特許公報」(=特許出願公開公報)が日本国特許庁から発行されるのは、原則として、特許庁が出願を受け付けてから18カ月(=1年半)経過した後になります。
公報が特許庁から発行されるまでは、特許出願人やその代理人、又はこれらの人からの委任状を持った人が出願書類を閲覧する以外、特許出願の内容を知ることはできません。
<特許掲載公報は特許権成立後2週間程度経過しないと発行されない>
特許出願後に直ちに審査請求が行われ、更に、「早期審査事情説明書」が提出されて早期審査の対象になり早期に特許成立した場合には上述した「公開特許公報」(=特許出願公開公報)が発行される前でも特許掲載公報が発行されることがあります。
独占排他権である特許権が成立した技術内容を広く社会に公示し、特許掲載公報発効後の6カ月以内であれば特許庁に対して何人も再審査を求める特許異議申立提出を可能にしているものです。
特許掲載公報が特許庁から発行されるのは特許権が成立してから2週間程度経過してからになるのが一般的です。
<J-PlatPat では特許出願公開公報・特許掲載公報しか検索できない>
J-PlatPatで先行技術文献調査できるのは「公開特許公報」(=特許出願公開公報)が特許庁から発行されてから、あるいは、特許掲載公報が日本国特許庁から発行されてからになります。
そこで、特許出願の前に特許庁のJ-PlatPatで先行技術文献調査を行っていても直近18カ月の間に特許庁に提出されている特許出願については調査できていないのが一般的です。
また、特許出願後に直ちに審査請求が行われ、更に、「早期審査事情説明書」が提出されて早期審査の対象になり早期に特許成立して「公開特許公報」(=特許出願公開公報)が発行される前に特許掲載公報が発行されるものも、特許権成立直後であれば特許掲載公報が未発行で、J-PlatPatで行った先行技術文献調査では調査できていないことがあります。
<「直ちに実施しても大丈夫」なのか?>
特許出願の前に特許庁のJ-PlatPatで先行技術文献調査を行っていても直近18カ月の間に特許庁に提出されている特許出願については調査できていないことが一般的です。また、直近に成立している特許権の特許掲載公報が発行されていなくて調査できていないこともあります。
特許出願した発明内容を直ちに会社の事業で実施開始した場合、出願前の調査で把握できなかった期間に出願が行われ、実施開始後に出願公開された他社の特許出願で特許請求されている発明との間で抵触関係が生じることがあります。
この場合には、当該出願公開に係る特許出願の出願人から「御社の実施行為は、御社の実施開始前に弊社が特許出願し、御社の実施開始後に特許出願公開公報が発行された弊社の特許出願で特許請求している発明に抵触します。今後、弊社が特許庁で審査を受け、特許権が成立して、成立した弊社の特許権に御社の実施行為が抵触する場合には、この警告書をお届けした日から弊社特許権成立までの御社の実施行為に対して実施料相当額の補償金(特許法第65条)の支払いを求めることになります。」という警告書を受けることがあり得ます。
また、出願前の調査時点では特許掲載公報が発行されていなかった特許権との間で抵触関係が生じることもあります。
この場合には、出願前の調査時点では特許掲載公報が発行されていなかった特許権に係る特許権者から、実施行為が特許権侵害にあたるとして侵害行為の停止を求める警告書を受け取る、等の事態になります。
<実施したときの安全を確認する目的での早期審査>
上述したように「直ちに実施しても大丈夫」ということができない事情が存在していますが、特許出願について早期に審査を受けることで実施した時の安全を確認できます。
特許出願の審査では先願の規定(同一の発明について異なる日に複数の特許出願があったときは最先の特許出願に係る特許出願人でなければ特許を受けることができない)(特許法第39条)及び、先行している特許出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面の全体に対して先願の地位を与える拡大先願の規定(特許法第29条の2)に関する審査が行われます。
そこで、特許出願公開が行われていない、等の事情で特許出願前に先行技術文献調査できなかった範囲の他社の特許出願に係る発明との間での関係性に関しての審査が行われます。これにより、調査できなかった範囲に抵触するものが存在しているかどうかに関して判断できます。
また、特許出願の審査では、特許出願前に発行されていた特許出願公開公報、特許掲載公報に記載されている発明に基づいて、当業者が、容易に想到できる程度のものであるかどうかが進歩性の判断で検討されます。進歩性の判断が行われることで特許出願に係る発明の進歩性を否定することに用いられる先行特許出願としてどのようなものが存在していたかを特許庁の審査で確認できます。
特許出願で特許請求している発明を特許出願後、直ちに、実施する場合、上述したように特許庁での審査を受けることで調査できなかった範囲に抵触するものが存在しているかどうかを確認できます。
そこで、特許出願後に特許出願に係る発明の事業を直ちに開始する場合などでは、その事情を専門家である弁理士に説明し、審査請求や、早期審査を受けるための早期審査事情説明書提出を行う必要性について相談することをお勧めします。
■ニューストピックス■
●「レナウン」の社名が復活(オッジ・インターナショナル)
衣料品メーカーの「オッジ・インターナショナル」は、11月2日付で社名を「レナウン」に変更すると発表しました。知名度の高い社名に変更することで、企業ブランドを高め、成長につなげる狙いがあるということです。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
レナウンは、1902年創業のアパレル業界の老舗で、高度成長期に百貨店とともに事業を拡大し、90年代には世界最大級の売上高を誇るアパレルメーカーとなりました。
しかし、主要販路だった百貨店の販売低迷やユニクロをはじめとする低価格帯のブランドの台頭により、業績が低迷し、2020年5月に経営破綻しました。破産手続きを終えた旧レナウンは、法人としては消滅しましたが、レナウンの「ダーバン」「アクアスキュータム」などの有名ブランドは、「オッジ・インターナショナル」に事業譲渡されました。
同社では、引き継いだ2つのブランドが主力事業に成長したことから、老舗ブランドである「レナウン」へ社名変更することで、認知度の向上とブランディングを目指すとしています。
●人気ゲーム運営元を特許権侵害で提訴(セガ)
スマートフォン向けゲームなどを運営する「バンク・オブ・イノベーション」(BOI)は、ゲーム機器大手「セガ」から特許権侵害で訴えられたと発表しました。
▷詳細はこちら(PDFが開きます)
BOIによると、人気ソーシャルゲーム「メメントモリ」と2023年にサービスを終了した「幻獣契約クリプトラクト」がセガの持つ5件の特許権を侵害しているとして提訴されました。セガ側はゲームプログラム差し止めのほか、損害賠償金10億円と損害遅延金を求めているということです。
両社は特許権の実施権許諾条件について協議を重ねてきましたが、合意に至らず、今回の提訴となりました。対象となるのは、特許第5930111号をはじめとする5件です。BOIは、「当社サービスが当該特許権を侵害しているとの事実はないものと認識しており、訴訟の中で、当社の主張の正当性を明らかにする」としています。
●電子マネー「PayPay」の決済音、音商標で出願
ソフトバンクグループの「PayPay(ペイペイ)」は、電子マネーの決済手続き時の「ペイペイ!」という音を音商標として出願しています(商願2024-030560)。
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音商標は、メロディー、音声、自然音などからなる商標のことで、聴覚で認識される商標のことです。商標は、文字や図形(ロゴ)からなるものだけでなく、音についても登録することができます。音商標は、2015年4月1日から登録が認められるようになった比較的新しい商標です。
決済音は、支払が完了したことを確認するための機能ですが、それ以外にも、「ユーザーに『支払った感』を与える効果」「ユーザーへのブランド告知効果」などさまざまな効果も考えられます。
電子マネーの決済音としては、イオンの電子マネー「WAON(わおん)」の決済音(犬の鳴き声ごえのイメージ)が2017年に音商標として登録されています(登録番号: 5984020号)。
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●知的財産の取引適正化に向け下請法改正へ(公取委)
公正取引委員会と中小企業庁は、下請の中小企業が持つ図面や生産ノウハウなどの知的財産を、発注企業側が開示を強要したり、無償譲渡させたりする行為などが多いという実態調査を受け、近く下請法を改正する方針です。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
日本商工会議所が実施した「知財の取引適正化に関する中小企業の現状・施策の認知度」によると、知財侵害行為を受けたことがある割合は11.9%と、約8社に1社が知財侵害を経験したと回答しています。
また、公取委が実施した「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」によると、「秘密保持契約・目的外使用禁止契約無しでの取引を強要される」「知的財産権の無償譲渡・無償ライセンス等を強要される」などの知財侵害行為が依然として多い実態が明らかになっています。
公取委は、こうした行為は、優越的地位の濫用にあたる可能性があるとして、詳しく実態調査する方針を示しました。これを受け、中小企業庁は、大企業と中小企業間の知的財産をめぐる取引の適正化に向け、来年の通常国会での下請法改正を視野に検討を進めています。
●商標の審査着手状況(審査未着手案件)を公表(特許庁)
特許庁は、令和6年10月時点における商標登録出願の審査着手の見通し時期を公表しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
商標の審査結果が通知されるまでの期間は、区分によって異なりますが、概算で約7~10ヶ月とされます。案件ごとに審査のスケジュールを確認することができませんが、ご自身の案件の指定商品・役務で、大体の審査の着手時期を確認することができます。
権利の早期化を希望する場合、商標早期審査やファストトラック審査の活用を検討してください。
●海外出願の権利化に要する費用を補助する「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」(特許庁)
特許庁のウェブサイトには「外国出願の権利化に要する費用を補助します」ということで「外国出願・審査請求・中間応答支援(海外権利化支援事業)」が紹介されています。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
「海外市場での販路開拓や円滑な営業展開、また模倣被害への対策には、進出先において特許権や商標権等を取得することが重要」であるとして、「外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業などに対し、一般社団法人発明推進協会を通じて、海外知財庁における権利化(①出願、②審査請求、③中間応答)に要する費用の1/2を助成」するものです。
補助金の申請は発明推進協会へ行います。補助金交付を受けることのできる種々の条件、申請方法などの詳細は発明推進協会の中小企業等海外展開支援事業補助金(令和6年度海外権利化支援事業)をご参照ください。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
<【出願】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年11月18日(月)~12月3日(火)(本年度3回目の公募期間で、本年度はこれが最後になります。)
・発明推進協会への補助金申請時に既に日本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠又は商標出願済みで、採択後に同内容の出願を優先権を主張して外国へ公募毎に指定する期限までに出願を行う予定の案件、等が助成対象になります。
・外国での特許、実用新案、意匠又は商標の出願・権利化を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等で(国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国出願に要する費用の1/2が助成されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用などが補助の対象で、補助率は1 / 2、上限額は1企業あたり:300万円、1案件あたり:特許 150万円、実用新案・意匠・商標 それぞれ60万円、冒認対策商標 30万円 (冒認対策商標とは、冒認出願の対策を目的とした商標出願)
なお、「国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者」は特許庁ウェブサイトで説明されています。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)
<【審査請求】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年5月30日(木)~2025年2月7日(金)
・外国特許庁へ「審査請求」を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等(で国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国特許庁での審査請求に要する費用の1/2が助成されるものです。
・令和5年度までに、特許庁の「外国出願補助金(中小企業等外国出願支援事業)」または「スタートアップで活用予定の海外出願支援事業(出願手続)」を利用して出願した「特許」の案件で、審査請求期間内であることが要求されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、(1)外国特許庁への審査請求料(審査請求と同時に行う補正費用についても対象)、(2)(1)に要する国内代理人・現地代理人費用、(3)(1)に要する翻訳費用が補助対象経費になります。
・補助率は1 / 2で、上限額は、1手続(各国別)あたり50万円(1法人(又は1個人)当たりの上限額なし)。
<【中間応答】にかかる費用補助>
・公募期間:2024年5月30日(木)~2025年2月7日(金)
・外国特許庁へ特許出願を行った案件で、拒絶理由通知を受領し、今後、応答(すなわち、中間応答)を予定している中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等(で国際出願関係手数料に係る軽減・支援事業対象者)に対し、外国出願の中間応答に要する費用の1/2が助成されるものです。
・令和5年度までに、特許庁の「外国出願補助金(中小企業等外国出願支援事業)」または「スタートアップで活用予定の海外出願支援事業(出願手続)」を利用して出願した「特許」の案件で、外国特許庁から「新規性」、「進歩性」の指摘を受けた拒絶理由通知を受領し、応答期限内の対応が可能であることが要求されます。
・発明推進協会に補助金申請し、採択決定後に発生した費用に限りますが、(1)外国特許庁への中間応答費用、(2)(1)に要する国内代理人・現地代理人費用、(3)(1)に要する翻訳費用が補助対象経費になります。
・補助率は1 / 2で、上限額は、1手続(各国別)あたり50万円(1法人(又は1個人)当たりの上限額なし)。
<編集後記>
【今月の一冊】『戦略コンサルが知らない 最強の知財経』(林力一・渋谷高弘著、日本経済新聞出版発行)「攻めのオープンな知財戦略」により、競争を促進させて事業効率化を図ることが提唱されています。
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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com
<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内
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