藤川IP特許事務所メールマガジン 2026年6月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━
                        2026年6月号
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┃ ◎本号のコンテンツ◎
┃ 
┃ ☆知財講座☆
┃(53)新規事項を追加する補正の禁止(3)
┃   ~「明細書」「図面」の記載について行う補正~

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■コンセント制度に関する商標審査基準を改訂(特許庁)
┃ ■欧州への特許出願件数が過去最多(欧州特許庁)
┃ ■令和7年度分野別の特許出願技術動向調査を公表(特許庁)
┃ ■日本茶のブランド保護へ 「ナショナルGI」登録申請
┃ ■「企業価値担保権」制度がスタート(金融庁)
┃ ◆助成金情報 令和8年度「中小企業等海外侵害対策支援事業」
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企業が持つ知的財産や技術力などの無形資産を含む事業全体を担保に融資する「企業価値担保権」が5月から認められるようになりました。

今回の制度開始により、企業は不動産等の物的担保がなくても事業全体の価値に基づいて資金調達が可能となります。

一方、融資する金融機関は、無形資産を含めた事業価値をどう算定するかといった「目利き力」が試されることになりそうです。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(53)新規事項を追加する補正の禁止(3)
~「明細書」「図面」の記載について行う補正~

 前回に引き続いて、特許審査基準の記載を参照して、新規事項を追加する補正の禁止について説明します。

 明細書、特許請求の範囲、図面に対して特許出願後に行う補正が、新規事項追加にあたらず許容される場合として①当初明細書等に明示的に記載された事項にする補正及び、②当初明細書等の記載から自明な事項にする補正があること、これらのいずれにも該当しない場合であっても、③「当初明細書等に記載した事項」との関係において新たな技術的事項を導入するものでないならば、その補正は許される、と審査基準に記載されていることを1回目の最後に説明しました。

 この③の場合については、「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」の記載について行う補正のそれぞれについて、補正が許される場合及び許されない場合が審査基準に例示されており、審査官はこれを考慮して「補正が新規事項を追加するものであるか否かを判断する」ことになっています。

 今回は、「明細書」、「図面」の記載について行う補正について示されている基準の中の一部を紹介します。

<明細書の補正>
(1)「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正
<文献公知発明に係る情報の記載>

 特許出願の際、「(特許請求の範囲に記載している請求項に係る発明に)関連する文献公知発明が記載されていた刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在」を「先行技術文献情報」として明細書の中に記載することが要請されています(特許法第36条第4項第2号)。これを「文献公知発明に係る情報の記載」といいます。

<「文献公知発明に係る情報の記載」不備で拒絶理由を受けることがある>

 特許出願について「出願審査請求」(特許法第48条の3)を行って特許庁審査官による審査を受けますと、審査官は明細書の記載を検討し、「特許出願が特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないと認めるときは、特許出願人に対し、その旨を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えることができる。」ことになっています(特許法第48条の7)。

 この特許法第48条の7の規定による通知を受けた場合であって、「その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によってもなお特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たすこととならないとき」には拒絶理由が通知されることになっています(特許法第49条第1項第5号)。

 特許出願の明細書では、一般的に、冒頭に「技術分野」、「背景技術」の欄をそれぞれ設けて記載します。

 上述した特許法の要請があることから、「背景技術」の欄では、特許出願前にJ-Plat Patを利用するなどして行った特許調査で発見できた、特許請求の範囲に記載している請求項に係る発明に関連する、特許出願公開公報や特許公報の記載内容に言及し、事前の特許調査で発見できた特許出願公開公報の番号などを「先行技術文献」欄に記載することが一般的になっています。

 特許審査基準には、「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項追加になる場合、新規事項追加にならない場合のそれぞれについて説明が行われています。

<「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項追加にならない場合>

 明細書に記載していた「先行技術文献情報」について補正する場合、以下の(i)及び(ii)のいずれかに該当する補正は、新たな技術的事項を導入するものではないので許されることになっています。

(i)先行技術文献情報を発明の詳細な説明に追加する補正
(ii)当初明細書において記載されていた「先行技術文献情報」に係る特許出願公開公報などの文献に記載されている内容を、発明の詳細な説明の【背景技術】の欄に追加する補正

<「文献公知発明に係る情報の記載」についての補正が新規事項追加になる場合>

 以下の(iii)及び(iv)のいずれかに該当する補正は、新たな技術的事項を導入するものであるので許容されないことになっています。

(iii)出願に係る発明との対比等、発明の評価に関する情報や発明の実施に関する情報を追加する補正
(iv) 「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていなければならない」という明細書の記載に要求される実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)の不備を解消するために先行技術文献に記載された内容を追加する補正。

(2)発明の効果に関する記載を明細書に追加する補正

 一般に、発明の効果を追加する補正は 、新たな技術的事項を導入するものとされて、許容されません。

 しかし、当初明細書等に発明の構造、作用又は機能が明示的に記載されており、この記載から発明の効果が自明な事項である場合は、その発明の効果を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されることになっています。

(3)不整合記載を解消する補正

 当初明細書等の中に矛盾する二以上の記載がある場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかなときに、その正しい記載に整合させる補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されます。

 一方、明細書等の中に矛盾する二以上の記載が存在する場合であって、そのうちのいずれが正しいかが、当初明細書等の記載から、当業者にとって自明でないときに、どちらか一方の記載に「整合」させようとすると、「当初明細書等の記載から自明な事項にする補正」ではなく、「新規事項を追加する補正である」として拒絶理由を受ける可能性があります。

 このような場合に「明細書の中に存在している、矛盾する二以上の記載」の総てを削除する補正を行うことが考えられますが、この場合も、このようにしても「新規事項追加の補正にあたる」とされる可能性が無いことを確認した上で行う必要があります。

 この意味で、明細書等の記載内容を十分に検討・確認してから特許出願を行うことが大切になります。

(4)明瞭でない記載を明瞭化する補正

 明細書の中に不明瞭な記載が存在している場合です。

 明細書の中に存在している記載が、それ自体では明瞭でないものであっても、その本来の意味が、当初明細書等の記載から当業者にとって明らかな場合、それを明瞭化する補正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、許容されます。

 一方、明細書の中に存在している不明瞭な記載に関して、その本来の意味が、当初明細書等の記載から当業者にとって自明でない場合、そのような記載を明瞭化する補正を行うと、「当初明細書等の記載から自明な事項にする補正」ではなく、「新規事項を追加する補正である」として拒絶理由を受ける可能性があります。

 この意味でも、明細書の記載内容を十分に検討・確認してから特許出願を行うことが大切になります。

(5)具体例を追加する補正

 発明の具体例を追加する補正は、一般に、新たな技術的事項を導入するものになりますから、許容されません。

 特許審査基準には、「複数の成分から成るゴム組成物に係る特許出願において、『特定の成分を追加することもできる』という情報を追加する補正は、一般に、許されない。」とされています。

 また、特許審査基準では、「当初明細書等において、特定の弾性支持体を開示することなく、弾性支持体を備えた装置が記載されていた場合において、『弾性支持体としてつるまきバネを使用することができる』という情報を追加する補正は 、一般に、許されない。」とされています。

 この点、当初明細書等には、弾性支持体を備えた装置が記載されているのみで、特定の弾性支持体について開示されていないが、当業者であれば、出願当初の図面の記載及び出願時の技術常識からみて、当初明細書等に記載されている「弾性支持体」は「つるまきバネ」を意味していることが自明であると理解するという場合のように、「当業者であれば、出願時の技術常識に照らし、補正された事項が当初明細書等の複数の記載から自明な事項と理解できる場合」は、「弾性支持体」を「つるまきバネ」にする補正が、新規事項の追加にあたらないとして許容されることと対比しておさえておくことが望ましいと思われます。

(6) 無関係又は矛盾する事項を追加する補正の場合

 当初明細書等に記載した事項と関係のない事項又は矛盾する事項を追加する補正は、新たな技術的事項を導入するもので、許容されない、とされています。

<図面の補正>

 出願時に提出していた図面の補正は、たとえ、出願時に提出していた図面を浄書した図面に補正する場合であっても、「新たな技術的事項が導入された」とみなされることが多いので、注意を要しますが、補正により提出する図面によって「新たな技術的事項が導入される」ものでなければ、原則として、新規事項追加に当たらず、図面の補正は許容されます。

■ニューストピックス■

●コンセント制度に関する商標審査基準を改訂(特許庁)
特許庁は、コンセント制度に関する商標審査基準を改訂しました。

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今回の改訂では、コンセント制度において「混同を生ずるおそれがない」と判断できる場合について明確化しました。改訂後の「商標審査基準」〔改訂第17版〕は、2026年4月1日以降の出願に適用されます。

コンセント制度は、先行登録商標と同一又は類似する商標であっても、先行登録商標権者の承諾(コンセント)を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標との間で「混同を生ずるおそれがない」と判断できるものについては、登録を認めるという制度です。令和6年4月1日に施行されました。

今回の改訂により、以下のケースが「混同を生ずるおそれがない」と判断できるものとして明確化されました。

①出願人と先行登録商標権者(引用商標権者)に支配関係等がある場合は、「出所の混同のおそれ」がないものとして取り扱う。
②両商標が使用される商品又は役務の出所が実質的に同一である場合は、「出所の混同のおそれ」がないと判断する。

この「実質的同一性」の判断にあたっては、以下の具体的な事情を総合的に考慮するとしています。

①出願人と引用商標権者との関係性、②商品・役務に関する事業の実施状況、③商標の使用態様、④取引の実情 など

●欧州への特許出願件数が過去最多(欧州特許庁)
欧州特許庁(EPO)は、特許出願統計および技術動向をまとめた「Technology Dashboard (旧Patent Index)2025」を公表しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

それによると、2025年に欧州特許庁(EPO)への特許出願件数は、過去最多の201,974件(前年比+1.4%)に達し、初めて20万件を突破しました。

出願人を地域別にみると、EPC(欧州特許条約)加盟国からの出願が全体の約42.9%を占め、最大のシェアとなっています。アジア勢のシェアは約28.5%で、その内訳は中国が約10.9%、日本が約10.5%、韓国が約7.1%です。

主な出願国をみると、1位:米国(47,008件)、2位:ドイツ(24,476件)、3位:中国(22,031件)、4位:日本(21,304件)、5位:韓国(14,355件)となっています。

2025年のEPOによる特許の総付与件数は前年の109,524件から119,756件へと増加(約9.4%増)しました。

また、単一効特許(Unitary Patent)の請求率も上昇し、前年の25.6%から28.7%(34,357件)となりました。

2023年に開始された単一効特許は、欧州特許庁(EPO)が付与した欧州特許に「単一効」を付与することで、欧州単一効特許制度に参加している加盟国に対して、単一の効力を有する一つの特許権を与えるものです。国ごとに登録・維持手続を行う必要がなく、参加国で統一的な効力と紛争解決(統一特許裁判所)を特徴とします。

●令和7年度分野別特許出願技術動向調査結果を公表(特許庁)
特許庁は、市場創出・拡大が見込まれる技術テーマについて、特許情報等に基づいて日本の強み・課題等を分析した報告書「令和7年度分野別特許出願技術動向調査」を取りまとめ、公表しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

同調査では、4つの最先端技術テーマ(核融合発電、低炭素燃料エンジン、乳酸菌入り食品、サイバー攻撃検知技術~不正侵入・マルウェア等の検知に向けた情報セキュリティ技術~)について調査しました。

【調査結果の概要】
①「核融合発電」では、「マグネット」等の技術区分における国際展開発明件数が最多であり、当該技術分野において日本が強みを有している。
②「低炭素燃料エンジン」、「乳酸菌入り食品」及び「サイバー攻撃検知技術~不正侵入・マルウェア等の検知に向けた情報セキュリティ技術~」では、特許出願において複数の日本国籍出願人が存在感を示している。
③「低炭素燃料エンジン」では、国際展開発明件数が2021年以降、急激な増加傾向にある。
④「乳酸菌入り食品」では欧州が存在感を示している一方、「サイバー攻撃検知技術~不正侵入・マルウェア等の検知に向けた情報セキュリティ技術~」では米国が存在感を示している。

●日本茶のブランド保護へ 「ナショナルGI」登録申請(日本茶業中央会)
日本茶業中央会は、日本茶のブランドを保護するため、「地理的表示(GⅠ)保護制度」への登録を申請しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

「地理的表示制度:GI(Geographical Indication)」は、産地ゆかりの農林水産物について、国が知的財産として保護する制度で、2015年から始まっています。これまで、「神戸ビーフ」や「夕張メロン」などが登録されています。「GI」は特定の産地に限ったものが中心ですが、今回は産地ではなく、国全体を生産地とする「ナショナルGI」として申請。登録が認められれば、「日本酒」に続く2例目となります。

●「企業価値担保権」制度がスタート(金融庁)
 企業の知的財産や技術力などの無形資産を含む事業全体を担保に金融機関が融資する「企業価値担保権」制度が5月から開始されました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

企業価値担保権は、土地・建物などの「形ある資産」だけではなく、特許や著作権などの知的財産権、ブランド価値、技術力、ノウハウ、顧客基盤といった無形資産を含む「事業そのものの価値(=企業価値)」を担保とすることを可能にした新しい融資制度です。

従来の不動産等の個別資産への担保設定とは異なり、これまで評価されにくかった知的財産権やノウハウといった「無形資産」も、事業から生み出される企業価値として評価し、包括的に担保化できる点が最大の特徴です。

これにより、不動産等の有形資産を持たないスタートアップ企業やIT企業でも、事業全体の価値を担保に融資を受けやすくなることが期待されています。

また、現状では、融資を受ける際に経営者が連帯保証人となって倒産時に債務を負う「経営者保証」を求められるケースが多く、責任の重い連帯保証をためらい、融資を断念するケースは少なくありません。このため、企業価値担保権を利用した融資では、原則として経営者の個人保証の利用が制限されており、個人保証に依存しない融資慣行への転換も図られています。

一方、融資する金融機関においては、無形資産を含めた事業価値を適切に評価する仕組みが不十分であり、事業全体の価値をどう算定するかといった課題があり、またリスク管理も複雑になることが想定されます。

全国銀行協会では「技術力や知的財産、人的資本、販路といった無形資産も含めた事業性評価能力を磨き、早急に「目利き力」を高める必要がある」としています。

●助成金情報 令和8年度「中小企業等海外侵害対策支援事業」
特許庁は、海外で取得した特許・商標等の侵害を受けている中小企業に向けた「令和8年度中小企業等海外出願・侵害対策支援事業(中小企業等海外侵害対策支援事業)」を開始しました。

同事業は、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて、海外で模倣品等の被害を受けている中小企業を対象に侵害調査や模倣品業者への警告等に要する費用の2/3を助成し、海外における産業財産権の権利行使を支援するものです。

①模倣品対策支援
海外での模倣品流通状況の調査や模倣品業者への対抗措置に要する費用の3分の2(上限額400万円)を補助。

②抜け駆け商標・取消係争支援
現地企業などに不当に出願・権利化された商標を取り消すために要する費用の3分の2(上限額500万円)を補助。

③防衛型侵害対策支援
海外で産業財産権に係る係争に巻き込まれた場合の対抗措置に要する費用の3分の2(上限額500万円)を補助。

【各支援事業の申し込み期限】
2026年10月30日(金曜) 17時00分(予算がなくなり次第終了)詳細に関してはジェトロHPをご参照ください。

<模倣品対策支援>
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<抜け駆け商標・取消係争支援事業>
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<防衛型侵害対策支援事業>
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

<編集後記>
【今月の一冊】講談社現代新書『世界は知財でできている。』(稲穂健市著、講談社発行)生成AI時代を生き抜くための知財リテラシーについて解説する本です。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内

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