藤川IP特許事務所メールマガジン 2022年8月号

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◇◆◇ 藤川IP特許事務所 メールマガジン ◇◆◇
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━ 知財担当者のためのメルマガ ━━━━━━━━━━━━━━━

                       2022年8月号

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┃ ◎本号のコンテンツ◎
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┃ ☆知財講座☆
┃(7)特許出願人になれる者

┃ ☆ニューストピックス☆

┃ ■マルチマルチクレーム制限後の出願状況を公表(特許庁)
┃ ■特許料等の予納 今後の変更予定(特許庁)
┃ ■「氏名商標」の登録要件を緩和へ(特許庁)
┃ ■アマゾンジャパンと財務省関税局、模倣品の水際対策で協力
┃ ■営業秘密PR動画を公開(INPIT)
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特許料や手数料等の納付方法の一つである「予納」について、特許庁は今後、「特許印紙による予納」を廃止するとともに、新たに「インターネット出願ソフトを利用した予納」を開始する予定です。今号では、「予納」に関する変更内容について取り上げます。

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┃知┃財┃基┃礎┃講┃座┃
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(7)特許出願人になれる者

【質 問】
特許出願を他の会社と一緒に行いたいのですが、可能ですか?一緒に出願することにした場合、注意しておくべきことはありますか?また、特許出願を行った後に特許出願人の名義を変更することは可能ですか?

【回 答】
特許出願を他社と共同で行うことは可能ですし、特許出願後に特許出願人の名義を変更することも可能です。

<特許を受ける権利>
発明が完成すると、その完成した発明について特許権の付与を求めて特許庁に出願し審査を受けます。新規性、進歩性などの条件を満たしている発明であることが特許庁の審査で認められると1~3年分の特許料を納付することで特許権が成立します。

このように発明の完成から特許権成立までは時間を要します。特許法では、発明が完成してから特許権が成立するまでの間における発明者などの利益状態を保護する目的で「特許を受ける権利」というものを認めています。

「特許受ける権利」は発明者が発明を完成させることで発生します。「特許受ける権利」は国家に対して特許権の付与を請求できる権利ですから公権であるとともに請求権であり、かつ、財産権の一種であると考えられています。

財産権の一種ですから、その全部、あるいは一部を譲渡、等によって移転することが可能です。

<特許出願人になれる者>
特許出願を行うためには法律上の権利義務の主体となる資格(=権利能力)が必要です。一般的にいう「人」(=自然人)と、法律上の「人」としての地位を認められた団体(=法人)は権利能力を備えており、特許出願人になることができます。

しかし、特許取得を希望する発明についての「特許を受ける権利」を有していなければ特許出願人になることができません。特許出願人がその発明についての「特許を受ける権利」を有していない場合、特許出願の審査の段階では拒絶理由となって特許が認められません。また、特許権成立後であれば、特許無効の理由となって特許無効審判の請求によって特許権が取り消されます。

これはいわゆる「冒認出願」と呼ばれるもので、他人の発明をスパイ行為などによって盗んで特許出願を行っても特許は認められません。

<「特許を受ける権利」を取得する形態>
発明者は発明完成によってその発明についての「特許を受ける権利」を取得します。そこで、発明者が特許出願人になって特許出願を行うことができます。

例えば、個人事業主である事業主個人が発明を完成させ、特許出願人となって個人で特許権取得し、会社に実施許諾するケースなどがあります。特許出願人になる者が発明者から「特許を受ける権利」を取得する最も一般的な形態は会社の従業員などが行った発明の「特許を受ける権利」を会社が取得して会社が特許出願人となるものです。この「職務発明」のケースについては後述します。

特許出願後は「特許を受ける権利」を譲渡したことを証明する「譲渡証書」を譲渡人が作成し、この「譲渡証書」を譲受人が特許庁へ提出して特許出願人の名義を変更できます。なお、特許法では「特許を受ける権利」を譲り受ける者である譲受人を「承継人」と表現します。

「特許を受ける権利」は目に見えません。このため、発明者との間でトラブル等が発生するなどで発明者が「特許を受ける権利」を二重譲渡することが起こり得ます。この点も考慮して、特許出願前における「特許を受ける権利」の承継はその承継人が特許出願をしなければ第三者に対抗できないことになっています(特許法第34条)。会社外の発明者から「特許を受ける権利」を取得して特許出願を行う等の場合、二重譲渡が生じないように注意を払う、遅滞なく特許出願を行う、等の対応に注意を払うことが望ましいと考えられます。

<職務発明制度>
特許法では「特許を受ける権利」は発明者が発明を完成することで発生し、発明者が発明完成時点で「特許を受ける権利」を取得することにしています。

しかし、会社の従業員が完成した、会社の業務範囲に属し、なおかつ、発明を完成させた従業員の職務上の発明である「職務発明」に関しては、従業員への給与、設備、研究費の提供等、使用者による貢献がなされています。

そこで、特許法では、従業員と使用者との間の衡平に考慮して、使用者に「職務発明」についての無償の通常実施権(特許発明を実施できる権利)を付与するとともに(特許法第35条第1項)、あらかじめ使用者が従業員との間で「職務発明についての特許を受ける権利」を承継すること等を取り決めておくことを認めています(同条第2項反対解釈)。

なお、職務発明を行った従業員は、当該職務発明について使用者に「特許を受ける権利」を取得させたとき、あるいは、特許権を承継させたとき、使用者から「相当の利益」を受ける権利を有することになっています(同条第4項)。

会社内に職務発明規定を設け、使用者が「特許を受ける権利」を取得することを従業員との間であらかじめ取り決め、「従業員が職務発明を完成させた時からその特許を受ける権利は使用者に帰属する(いわゆる原始使用者等帰属)」ように取り決める、あるいは、そのような取決めがないときに、「その特許を受ける権利は従業員に帰属(いわゆる原始従業者等帰属)し、あらかじめ従業員との間で取り決めていたところによって使用者が特許を受ける権利を承継できる」ようにすることが可能です。

<次号のご案内>
来月は特許出願を行った発明が採用されている製品や、特許取得した特許発明が採用されている製品につける特許表示について紹介し、併せて虚偽表示について説明します。

■ニューストピックス■
マルチマルチクレーム制限後の出願状況を公表(特許庁)
特許庁は、マルチマルチクレーム制限後の出願状況を公表しました。

▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

それによると、特許出願全体に占めるマルチマルチクレームを含む出願の割合は、マルチマルチクレーム制限前は65%程度であったのに対して、制限後は5%程度(令和4年4月出願分は6.0%、同年5月出願分は4.5%)に減少しました。

また、実用新案登録出願全体に占めるマルチマルチクレームを含む出願の割合も、マルチマルチクレーム制限前は25%程度であったのに対して、制限後は3%程度(令和4年4月出願分は3.3%、同年5月出願分は2.6%)に減少しました。

「マルチマルチクレーム」とは、「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項(マルチクレーム)を引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」を意味します。

特許出願後にマルチマルチクレームを含むことに気づいた場合は、例えば審査請求するときまでに自発補正することで、マルチマルチクレームに係る委任省令要件違反の拒絶理由が通知されることを回避することができます。

ただし、そのような補正をしない場合には、マルチマルチクレームが含まれている旨の拒絶理由が通知されます。そして、その応答によりマルチマルチクレームが解消された補正後の請求項に係る発明が、その他の拒絶理由を有する場合には、最後の拒絶理由が通知され、補正をすることができる範囲が制限されるおそれがあるので、注意が
必要です。

・特許料等の予納制度 今後の変更予定(特許庁)
特許料や手数料等の納付方法の一つである「予納」について、従来、予納への入金は「特許印紙」に限られていましたが、令和3年の法改正によって予納への入金が「現金(電子現金)」へと変更になり、これに伴い、令和3年10月1日から「銀行振込による予納(現金納付)」を開始しています。

特許庁は今後、新たに「インターネット出願ソフトを利用した予納」を開始するとともに、「特許印紙による予納」の廃止を予定しています。

■現行の予納制度■
(1)銀行振込による予納
現金納付書を用いて金融機関窓口にて振り込み、納付済証を「予納書」に添付して特許庁へ提出し入金する方法。郵便局等で多額の特許印紙を購入し、書面に貼り付けて特許庁に納付するといった事務負担の大きい手続が不要となります。

(2)特許印紙による予納
郵便局等で購入した特許印紙を「予納書」に貼り付けて特許庁へ提出し入金する方法。

■今後の変更予定■
(1)インターネット出願ソフトを利用した予納の開始(令和5年1月)
インターネット出願ソフトを利用した予納(電子現金による予納)を開始。これにより、入金から予納書提出まで、オンラインで手続が完結します。

(2)特許印紙による予納の廃止(令和5年度前半)
電子現金による予納の開始後、一定期間経過後に「特許印紙」による予納入金を終了。今後、予納への入金手段は、書面においては「現金納付書」、インターネット出願ソフトにおいては「電子現金」での入金の取り扱いとなります。

ただし、特許印紙による予納の廃止後も、予納制度自体は存続するので、既に入金済の予納残高、特許印紙による予納の廃止前に入金した残高及び予納台帳は継続して利用が可能です。

・「氏名商標」の登録要件を緩和へ(特許庁)
特許庁は、「氏名ブランド」の商標登録が認められやすくするよう商標法を改正する方向で検討を進めています。

現在、氏名を含む文字を商標として登録する場合、人格権保護の観点から、その氏名をもつ人全員の同意を得る必要があるため、事実上登録は困難となっています。ファッション業界などでは、デザイナーの氏名をそのままブランド名として使うことが多いようですが、近年、氏名の入った商標登録が拒絶されるケースが相次いでいます。

例えば、アクセサリーデザイナーの菊地健氏がブランド名「KENKIKUCHI(ケンキクチ)」の文字列を含んだロゴを商標出願したところ、特許庁に登録を拒絶され、知財高裁も特許庁の判断を支持する判決を下し、最高裁判所への上告受理申立は却下されました。

商願2017-69467


特許庁は、商標中の氏名と同じ名前の他人が存在するかを電話帳「ハローページ」などで確認しています。例えば「ケンキクチ」は、「菊地健」「菊池健」など、同じ発音とみられる人々全員からの承諾が必要となり、事実上、登録は不可能に近い状況となっています。

一方、欧米や中国、韓国では氏名を含む商標は一定の条件のもとで原則登録を認めていることや、企業のブランド展開を阻害する要因になっているとの指摘などから、特許庁では今後、商標に氏名が含まれている場合でも登録要件を緩和して登録しやすくする方向で検討を進めています。

・アマゾンジャパンと財務省関税局、模倣品の水際対策で協力
インターネット通販大手・アマゾンジャパンは、知的財産侵害物品などの国内流入防止に向け、財務省関税局と模倣品などの水際取り締まりに関する協力関係の強化について覚書を締結したと発表しました。

財務省関税局が電子商取引(EC)事業者と覚書を締結するのは、今回が初めて。

覚書の締結に伴い、アマゾンジャパンと財務省関税局は、模倣品などの国内流入防止のための協力関係の強化方法について共同で検討し、税関が差し止めた模倣品や関連する模倣品業者に関する情報交換を進めていくとしています。

また、令和4年10月1日より、商標法と意匠法の改正法が施行され、海外からの模倣品流入への規制が強化されます。海外の事業者が模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為について、権利侵害行為となることが明確化されました。

その結果、海外の通販サイトで商品を購入した場合など、海外の事業者から送付される物品が(商標権、意匠権に係る)模倣品である場合、税関による没収の対象となります。

・営業秘密PR動画を公開(INPIT)
INPIT(工業所有権情報・研修館)は、無料で知的財産が学べるe-ラーニングサイト「IP ePlat」で、営業秘密に関するPR動画を公開しました。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

営業秘密の具体的な管理手法等について解説した動画で、第1弾から第3弾までの3件です。短いドラマ形式で、ビジネスにおける営業秘密の重要性を身近に感じることができるそうです。

<編集後記>
最近、知的財産をテーマとする面白い動画作品を見かけます。

例えば、特許庁の動画チャンネルでは「商標拳~ビジネスを守る奥義~」という商標普及啓発動画が公開されています。
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

また、史上初の知的財産を題材にした映画「知的財産村の財宝~知的財産剣(R)VSダーマス海賊団~」が2022年8月5日~14日に東京の池袋HUMAXシネマズで劇場公開されます。(東京以外での公開は未定のようです。)
▷詳細はこちら(別サイトが開きます)

この作品は知的財産の特性を活かした剣技を駆使する侍達の物語である知的財産剣(R)シリーズの第三弾です。

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発行元 藤川IP特許事務所
弁理士 藤川敬知
〒468-0026 名古屋市天白区土原4-157
TEL:052-888-1635 FAX:052-805-9480
E-mail:fujikawa@fujikawa-ip.com

<名駅サテライトオフィス>
〒451-0045 名古屋市西区名駅1-1-17
名駅ダイヤメイテツビル11階エキスパートオフィス名古屋内

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